milacle
□case5,帰国
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それから朝田先生が直前まで在籍していた明真大学付属病院で、記者会見が行われた。
そこでは、彼がどういう人間であったか、とかどうやって彼を特定したのかなどの説明があった。
それによると、決め手となったのは、出国する際にお守りとして彼が持っていたものと現地で側にあったものが一致したことが大きな要因だった。
だけどそれから1週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月と時が過ぎても、朝田先生の意識は依然として戻らないままだった。
しかも、搬送時から動物的な脳波はあったものの、人間としての脳波は依然として停止したままだった。
怪我もある程度回復し、自発呼吸もできるようになった。
だけど目を開けることも指が動くこともなかった。
そして、これ以上現地の病院で治療することは不可能だった。
けれど、過去に患者が慣れ親しんだ場所などで静養・治療した場合、まれに回復したという症例が数回あった。
そのため、一途の望みを賭けて朝田先生は日本に帰国することになった。