milacle

□case3,負傷
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最後のメールから1カ月後、ついに事件が起こってしまう。


いや、起こるべくして起こったという考え方のほうが正しいのかもしれない。


もし、朝田先生が日本に残っていたら……


もし、中東に派遣されていなかったら……


と考えてしまうととても疲れるけれど、運命だったのかもしれない。


だけど、僕たちは運命というものを認めたくなかった。


特に、小高先生は運命をねじ曲げて修正したいから医者の道を選んだのだから。


だから、あの時朝田先生の負傷という悲報を聞いた時のことは、想像することに難しくないと思う。


だけど…………………………


朝田先生たちが医療活動をしていた地域では、自爆テロや無差別殺人や戦争や民族同士の紛争といった自分や人の命を重く考えない人たちが非常に多い地域だった。


もちろんそこだけに限らず、世界中のあらゆるところで人と人同士の争いは昔から絶えることはなかった。


言葉も考え方も価値観も習慣も宗教も違う。


例を挙げるときりがないけど、そのような違いがあるからこそ、人類は進歩し歴史が作られてきた。


その代償が、時として戦争などを引き起こすことになってしまう。


そんな争いに朝田先生が巻き込まれてしまうなんて…………







中東地域



その日は、灼熱の太陽が照りつけるお昼のことだった。


朝田先生は、とある瓦礫と砂漠だらけの場所に設置された医療用テントの1つにいた。


いつものように、ただただ目の前の命を助けようとがむしゃらにメスを片手に患者と患者の間を走り回っていた。


その日もいつもと変わらずそうしていた。


あの時までは…………
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