龍の愛した女性〜ヒト〜

□case 9
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それからしばらくしたある日のこと。





朝田は屋上で物思いにふけっていた。





それは真中のことである。





最近、朝田は真中に対してある感情を持っていた。





それが仕事上のものなのか、恋愛感情によるものなのかはまだうまくわからなかった。






何とも説明出来ないこの想いは何なんだろうか?





もしかして、オレは…………………………









そう真剣に考えていると、屋上の扉が開く音がした。





朝田は反射的に振り向こうとした。






真中「あ、朝田先生」



朝田「真中か…………」





そう顔を向けた朝田先生の顔を夕陽が照らし、美しくさせていた。





思わずドキっとした真中。





(朝田先生、こんな表情もするんだ…………)





思わず朝田の顔を見つめてしまう真中。







……………………………………………………


……………………………………………………







沈黙の間を風がサッと吹き抜けていく。






朝田「オレの顔に何かついてるのか?」






真中は恥ずかしくなって屋上から逃げ出そうとした。





だけど、体のどこかが引っ掛かって前に進めない。






その方向を見ると、朝田先生が反射的に真中の右腕を掴んでいた。






朝田「…………すまない。お前のことを考えていた」



真中「私のこと…………?」





まさか…………朝田先生は私のことを……………………






そこで、朝田先生は重い口を開いた。






朝田「お前は、オレのことをどう思っている?」




えっ!?何!?





朝田「オレは…………真中のことが好きだ」




何!?この展開!?





真中「うそ…………朝田先生が…………私に…………」






朝田先生は顔を赤らめて言った。





朝田「嘘でこんなことは言わない」






その言葉聞いて涙が出てしまった。





朝田「すまない。オレが泣かしているのか?」





朝田先生はそう言って、私の頬に右手を当てて涙を拭った。





私は、それで今までの思いが溢れてきたような気がした。






真中「私…………私は………………」





言葉にできない私を、朝田先生はそっと優しく抱き締めてくれた。





その行為に、私はなんだかホッとした。






あぁ…………やっぱり私は朝田先生が好きなんだ………………





そう気付いた私は、朝田先生を抱き締め返した。





そんな2人を、夕陽が祝福するように優しく照らし包み込んでいた。
 

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