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□がうっ。
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「いらっしゃいませ〜」


決められた店の台詞を言いながらレジに立つ。
数人程お客を捌いた後、アリババは店内にあまりお客が居ない事を確認すると外に出た。
夕方近い外の世界は少しだけオレンジ色に染まっていた。
風はほんの少しだけ冷気を含んでいて、思わずぶるりと身が震えた。
帰る頃には真っ暗で、きっと夜風はもっと冷たいんだろうな。
そう何となく思いながら、アリババはゴミを確認するべくごみ箱の前に移動した。


ごみ箱の前には、缶が捨てられていた。
マナーがなっていないなと内心溜め息を零しながらそれを拾い上げると、缶類と貼られたごみ箱に捨てようとした。


その時、不意にアリババの身体に影が掛かった。
振り返り顔を上げてみれば、少しだけ目を丸くした。
身の丈まである真っ黒いロングコートに身を包んだ男性がいつの間にか佇んでいた。
身長は175pかもう少し上辺りだろうか。
顔はサングラスを掛けていて分からなかった。
成長途中だとしても160p未満のアリババには何とも羨ましい高さだった。


「いらっしゃいませ…」


見下ろされているからだろうか。
男性からは貫禄というか威圧感ともいえる圧迫感を感じてしまい、変に緊張してしまい控え目な声が出てしまった。
しかし男性はそんなもの気にも留めずに、ただ無言で少年を見下ろしていた。


(…な、何だこれ…)


動く気配のない相手に、アリババの表情が段々と困惑した面持ちに変わっていく。
最初はゴミを捨てに来たのかと思ったが、黒い革製の手袋をはめた男性の両手は空だった。
もしかして自分は、気付かない内にこの人に何か失礼な事をしてしまったのだろうか。
目こそ見えないが、鋭い視線は間違いなくアリババに向けられていた。
怖い。
凄く怖い。





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