黒バス
□夢か現か
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…言えるものなら、君に「ごめん」と伝えたかった。「愛してる」と言いたかった。
君がいるだけで俺は何かと幸せだった。
気がつけば俺はお前が好きで、楽しく生きる術だった。
「さよなら」
なんてまだ俺は言いたくは無いんだ。
ならば俺の目の前にある
四角く白い棺、ユリの花、愛しい君の写真。
「なぁ緑間」
なんて声をかけるといつも「なんなのだよ」と反応してくるあいつの声は、今は、どうだ。
虚空。
ここで目を見開いた。
俺はすぐに傍にあった携帯を取って君の電話帳をディスプレイに映す。
朝から君に電話をかける。
プルルプルルと言う音が響いていてやけに煩い。
長らく出ない電話。
(もう、でねぇか)
そう思って電源ボタンに指をかけて電話のコールをやめようとした時。
「…もしもし」
緑間。
ああ、やっぱりあれは悪夢だったんだ。夢だったんだ。夢以外あるわけない。何度目だ。邪魔な考えを捨てろ、これが現実なわけがないだろう。緑間が、死んでいるなんて。
「どうした?こんな時間から…出るのが遅くなって悪いな」
俺はふいに自分の目から零れる涙を必死にパジャマの袖で拭い、息を整えて、
「いや、ただ、お前の声を…」
柄でもない事を口に出して告げる。
やはり俺の悪い夢だった。緑間は、俺の緑間は…
「また変な夢でも見たのか?青峰」
ああ、愛おしい。今すぐにでも胸を貸して欲しい位。もう一度、あの頃のように、優しく。
「…ああ、とても酷い夢を」
あの頃の面影が脳裏をよぎり、一筋の光が頬を伝った。
緑間真太郎。
俺の、想い人。
(愛していたよ、)
夢か現か
(それは夢か現か。
彼の耳に聞こえるモノは。
彼の目に見えるモノは。
彼の、想い人の行方は。)