長文【零】
□山の怪 序
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遠くで腕組みしている男に構わず
それに話し掛ける
「何処から来たんだ?親とはぐれたのか…?」
こいつが出て来た茂みの奥を覗くと
同じ毛色の親と三匹の兄弟が、
木の根の間で尽きていた
「お前、ひとりぼっちなのか…。ふうん…。」
しゃがみ込んで其を抱くと、両前足で交互に私の胸元を柔らかく押す
「腹が減ったのか?私から乳は出んぞ。」
さて、これをどうするか…
取り敢えず、持って行くか。
放っておいた男が居た方を見ると、
もう目の前まで戻って来ていた。
すぐ横で同じ様に屈み、
私の胸に張り付く其を取り上げ
「…………猫か。」
と呟いた。
「腹が減っているらしい。お前何か無いか?」
聞くと無言で私に猫をまた戻し
背中の箱を下ろして、何やらごそごそ始めた。
*