長文【零】

□人拐い 弐
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程無くして、宿屋の下働きが襖を叩いた。



さっき男が話していた
“死んだ魚の目”がまた訪ねて来たらしい



誰なんだ…と思いつつも



呼びに来た男に付いて外の石段を降りると
昨日の銀時と、眼鏡の少年、それと変わったなりをした小柄の娘が待っていた。



“死んだ魚の目”…銀時の事だったのか…。



おう、と言って近付くと



銀時が咳払いをして口を開く



「拐われた女達をお嬢ちゃんが助けたってこいつから聞いてな。礼を言いに来た。」



隣を指差しながら、ふわりと笑った。



「姉上を助けて下さって、本当にありがとうございました!!!今朝は録にお礼も出来ず、すみません!」



深々と頭を下げる少年を睨みながら、
ひれ伏せ…土下座しろや眼鏡…と呟く娘が此方を見て明るく言った。



「姉御が助かって良かったアル。私からも礼を言うヨ、ホントにありがとーネ!ってゆかこの人が銀ちゃんの惚れた女アルか?」



銀時が娘の頭を、すぱーーーん!!!と勢い良く叩く。



…アル…?娘の語尾が…。アルって何だ?



「昼頃に姉上の意識が戻って、貴女の言った通り命に別状は無いとお医者様が…。姉上も貴女にとても感謝しています。」



少年がまた頭を下げる。



「いやぁ〜しっかし驚いたなァ〜。こんな可愛いお嬢ちゃんがたったの一人で人拐いを退治するたぁ…てゆうか、どうやって見付けたの…?いや……それより怪我無かったか?」



長身の男が心配そうに私を見たので
この通り、と言って少し笑って見せると



背を夕日に染め、「良かった。」と呟いて続けた。



「ってゆーかさぁー…あのおっかねぇ顔した男、アレホントにアレなの?…亭主なの?」



鼻の頭を掻きながら横に目をやって小声で聞いてきたので



「…あんなのが亭主な訳が無いだろう。唯、旅を供にする事になったというだけだ。仕方なくな。」



と言って苛々と腕組みし、眉を潜めた。



「銀ちゃん良かったアルね!砂の中から針を探す程でも可能性があるアル!さっきまで銀ちゃん酷いしょぼくれようだったもんね!」



アルアル言う娘の頭をまた、銀時が
すぱーーーん!!!と叩いた。



「なあ…旅って、どっか行っちまうのか?」



逆光で顔が見えなかったが
明日には経つと告げると寂しそうな声で、そっか…と呟いた。











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