長文【零】

□魔蝕の剣 壱
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舞台女優が突然消えたと言うので
モノノ怪の仕業かと、やって来てみると


それはそれは淡麗な容姿をした娘が
其の前へ佇んでおり



いとも容易く



モノノ怪の



【形】



【真】



【理】



その三つを自らの瞳に映し



身から引き抜き出でた、輝く剣で



魔を滅したのだ



その様は、あの空に煌めく月より美しく
余りの事に見惚れずにはいられなかった



声を掛けようにも、気付けばその場から直ぐに走り去って行った




女は間違いなく人であったが、間違いなく人で無い



そんな矛盾を心に巡らせた



「あの剣…、手に入れる のが賢いか。」


普段、感情も欲も薄いこの男だが



とてもあれが欲しくなった



暗黒を切り裂く刃に



魅入られてしまった



「…さて、どう出るか…。」



そう言って煙管を銜え、
白い雲を空へと浮かべた












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