長文【零】

□盲目の霧 弐
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次に目を開いた時、
私は先刻と変わらぬ姿のまま膝を丸めて布団の上で横になっていた



月影揺らめく室内は
今朝目覚めた場所と同じ景色だ



深い牙の痕が残っている筈の右足には
何の痛みも無く、代わりに金色の蝶が風に舞う様に浮かび上がっていた



体を起こし、闇の中に佇む姿を捉える



湯上がりの薄衣だけを纏う男を見据えると、心の奥深くから想いが湧き立つ



山犬の記憶、その感情は私に気付かせた



男が私に何を与えようとしていたのかを



巡り合った時からそうだったのかも知れない



私を欲しいと言ったのも



無窮を渡せと言ったのも



闇に堕ちそうな私を救ったのも



楓の元を去る時も



あの口付けも



真実が知りたいと、
それに触れたのに…私をモノノ怪では無いと言った



そして、全て引き受けると…守ると…



その言動が何を示していたのか…分かってしまった



ずきり と胸の奥に鋭い痛みが走る



それが真なのかを知りたかった



確信が欲しかった



ゆっくりと側に近付き



限りなく透明に近い前髪に隠れた



碧い瞳に輝く月を見詰めた














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