長文【零】

□盲目の霧 壱
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暖かい朝陽が瞼に降り注ぎ
その眩しさに顔を顰めて目を開けると



傍らにしゃがみ込んで真上から見下ろす
顔…。



「うわ!!!」



毎度の事ながら思わず声が出る。



「…やっと起きたか。さっさと支度を。」



既に身支度を整え準備万端な様子の男は、
余りの吃驚に放心状態の私を立たせ



何時も通り、微塵の無駄もない素晴らしい手付きで素早く着物を着せた。



間髪入れず 、次…と言いながら鏡台の前に私を座らせ、丁寧且つ手際良く髪を結わい付け



今度は前に回り込み、恐ろしい程器用に
美しい化粧を施した。



毎朝恒例の日常風景だ。



けれど私の心模様は日常通りでは無かった。
昨夜の事で、どうしようもなくそわそわと落ち着かない。



『全て引き受ける』



心に響くその言葉が、私の鼓動を跳ねさせた。



全て委ねても良いと、そう思えた。



しかしこいつは…あんなに大それた事をさらりと言っておいて、よくも何の変化も無く居られるものだ。



そう思ったが何となく口に出す事が出来ず、私の着ていた浴衣をきっちり畳む姿を鏡越しに見ていると



「何です…じろじろと。呆っとしている暇が有るのなら…あんたも早く 荷を纏めろ。」



そう言われ、何時もより大分慌てて旅荷を整えた。



荷を背負い、襖を開けたまま待つ背中の後ろに立つと、男は直ぐに歩き出した。











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