長文【零】
□墓場の鬼
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荷を再び背負った姿で、宿を出る。
賑やかな通りに面した宿の門まで続く石畳を、からんころん、と鳴らして歩いた。
門の出口に立つと、
坊主頭に白い法衣の童子が右側から走ってきた。
齢七つほどだろう。
丁度目の前に来た時
石に躓いて思いきり転び、狐の顔を見るなりわんわん泣き出した。
腕組みして暫く黙って見ていたが、
泣き止む様子は無い。
やれやれ と近付き、
目線を合わせるように屈む
「どれ、膝見せてみろ。」
擦りむけた足を掴んだ。
「ま!このぐらい大したこと無い。我慢しろ!」
背負った荷の中に手拭いが有ったのを覚えていたので、
引っ張り出して傷口に巻いてやった。
「家に帰ったら傷を清水で流せ。すぐ良くなるさ。もう泣くな!お前男だろう?」
ぶっきらぼうに言って童子を立たせ背中をとん、と叩いた。
すると童子は、涙を袖で拭った後
うん。と頷き
「ありがとう…。」
小さく呟き、ゆっくり歩いて行った。
寺のお使いにでも来ていたのか?などと考えながらその姿を見送っていると、
背後に人の気配。
立ち上がり様振り向くと、あの男がすぐ真後ろに立っていた。
余りの近距離、ぐっ、と身動ぎしてしまう。
「…やっと用意出来たようだ。直ぐに発ちますよ。」
そう言って男は、つかつかと早足で歩き出した。
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