長文【零】
□魔蝕の剣 弐
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血の気の無い顔をした男が、宿の外へ立つ
…あの娘、何者なのか。
先刻、娘の事を《魔蝕の剣》と呼んだ。
それは屏風の白虎を滅した時、
《魔》の魂を白い光が《蝕む》様で有ったから。
モノノ怪の記憶を辿る、
夢に似た独自の精神世界のような空間を
自らの意志で呼び開く。
人には扱えぬであろう剣を
その胸から解き放ち、魔を斬ったのを此の目で見た。
恐らく、その空間の中でなくとも同じ事が可能だろう。
故に只の“人”では無いと言う事は容易く確信出来ていた。
『お前は、私を封ずる為に来た者か?』
『 ではお前に着いて行き、魔を喰らえば …私を斬らぬ…とでも言うのか?』
封ずる?
魔を喰らう?
そう言っていたが、側に立っても
微かな妖気すら感じられ無かったのだ。
人の中に何かしら憑いていれば大概、
分かるというのに。
そしてあの時、
鏡を目にした反応を見る
娘の力欲しさに釜をかけてみると
思いの外、容易く落ちた。
随分と此に恐れを為している様子であった。
あの娘には何かが、有る。
「さて…どう紐解くべきか。」
そう言って、壁に凭れ
娘が出てくるのを待った。
*