長文【零】
□魔蝕の剣 壱
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下弦の月が浮かぶ空の下
芝居小屋の前に夜風に袖を靡かせ纏う姿がひとつ
紫色の頭巾
白い肌
目を引く隈取りの化粧
口角を上げて塗られた藤色の紅
上を向き、尖った耳
長く癖のある柔らかな薄灰の髪
浅葱色の着物に、ひらりと蝶結びの帯
背には、奇妙な模様が描かれた大きな箱
飄々とした態度で
高下駄を連れ、歩く
とても変わったなりをしてはいるが、
誠に美しい男であった。
表向き…只の旅の薬売り
だが訪れた先々で
そこへ生まれた
《モノノ怪》
そう呼ばれるモノを斬るという
もうひとつの目的も持っていた
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