長文【零】
□虎ノ屏風
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家路を急ぐ童子たち
照れながら互いに見詰め合う若い男女
酒瓶を幾つも抱え宴へ向かう男衆
手を繋ぎ歩く親子
点々と灯る行灯の間を
とても幸せそうで楽しげな人波が、
寄せては返す
柔らかく暖かな空気を感じながら
旅荷を背負い、ひとり町を歩く。
近辺一、華やかなこの宿場町の大通りには夕暮れ時にも関わらず
[ 商い中 ]の札がまだまだ沢山並んでいる
その中の一つの店先に、ずらり揃った様々な煙管
南蛮からの渡来品であろうか、
一際目を引く物を手に取り
店主に声を掛ける
「此と煙草、上等なのを一式くれ。」
「流石、御目が高い」と揉み手しながら
にこにこと笑う男は、ああだこうだと
自慢の品物について長々語る。
注文通りの品を目に鮮やかな和紙で包んで寄越し、頭を深々と下げた。
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