長文【零】
□張られた糸
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剣を突き刺した仰向けの体勢のまま
膝を立て、滲む仄暗い蔵の天井を見ていた
止めどなく溢れる涙を手の甲で拭う
直ぐ傍に来て私を抱き起こし、
見下ろす男に言った
「お前は…視ない方が良い………。」
男は何も言わず、泣き止まぬ私の額に
掌を置いた
*
もう大丈夫よ
無事に生まれたわ
かわいい、かわいい
何て愛らしいの
生まれてくる沢山の新しい生命が
この世に出て来るのを手伝うのよ
素晴らしい奇跡に何度も携われるなんて
こんな素敵なお仕事は他に無いわ
あなた達はこれから素晴らしい人生を送るのよ
何にも心配要らないわ
だって、あなた達を心の底から愛してくれる人が居るんだもの
私にも、可愛い娘が居るの
愛しくて、堪らない
あなたも父様や母様に沢山の愛を貰うのよ?
……………………………。
……………どうして?
この子…息をしていない
嫌…絶対に嫌…
折角生まれてきたのに
何とかして助けなきゃ
どうしたらいいの…?
誰か…この子を助けて!!!
*