長文【零】

□張られた糸
7ページ/9ページ






「……………気味が悪い。」



私の眼に写ったのは、闇の色を帯びた巨大な蜘蛛



その体からは、無数に赤子の顔が飛び出し
張り裂ける様な叫び声を上げていた



「……あれは確かに土蜘蛛。だが呼び集められた無数の赤子の魂を帯びて変異している。」



言いながら叢雲の刃先を土蜘蛛に翳し、
地を蹴って走り出した



土蜘蛛は恐ろしく尖った鋭い牙をこちらに向け、無限に糸を放射する



男が放った護符が壁となり弾き返すのを
盾にして
余す事無く切り払い、巨体の下に滑り込む



八本の脚の付け根
その鈍色をした光の隙間に刃先を捩じ込むと、数千の赤子の叫び声が耳を擘き



瞬く間に土蜘蛛の体は霧に変わり、
剣の霞と消えた









次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ