長文【零】

□張られた糸
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霧に美しく霞む月が出るまでの間に



私はまた眠りに落ち



いつか見たのと同じ夢を見ていた
















眩しい太陽



きらきらと輝く光の中



香る花、舞い踊る蝶



金色の鏡を手にする人影



逆光で顔が見えないが



この夢は知っている



ああ。あれは……あいつだ



しかし



何かが可笑しい



…ああ、そうか



着物が…いつもと違う



黒い…黒い…



闇色の着流し



どうしたんだ?そんな格好で…



口は開くのに…声が出ない



影は鏡を手に



私に手招きした



腕で眩しい光を遮り



少しづつ、近付く



僅かに開いた口元に



白い牙が覗く



あと少し



手を伸ばせば触れる



指先がその頬に届きそうになった時



私の手首を



強く



掴む



黒く染められた指先



………………!!!



これは……誰だ?















呼吸を荒げて飛び起きると



言い知れぬ不安が胸を渦巻いていた



あの手は、あいつの手では無かった



掴まれたそこから



魂が拒絶する程に禍々しいモノが伝わって来た



眼が…私に見せたのか?



あれは誰だ…?



速くなった鼓動を落ち着けようと、
胸に手を置き暫く下を向いていた。



すぐ傍に座って居た男が、
僅かに眉を上げて声を出す



「……そんな顔をして、どうしたんです?…悪夢、でも…見たか。」



「…………ああ。…只の夢だ。」



掌を握り締め、そう自分に言い聞かせた。











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