長文【零】

□墓場の鬼
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薄暗く、がらんとした部屋には
水差しと湯呑みが置かれた小さな丸い卓袱台を隔て、布団が二組敷かれていた。



その一方に、どかっと腰を下ろし
荷物から取り出した煙管に火を点ける。



ふうっと煙を吹くや否や
背から下ろした箱を何やらがちゃがちゃやっている男を睨み、言った。



「…お前、ふざけるなよ。…何が妹だ。」



男は背を向けたまま呟く。



「…仕方ないじゃあないですか。
ここに留まる為に、成り行きで、ね。
…それとも 妻、と言った方が良かったか。」



阿呆が。



話にならんので煙管を咬みながら無視した。



暫くすると男は隣の布団に横になり
こちらを向いて口を開く。



「ところで…狸だが、あんたはどう見る?」



ふん、と鼻を鳴らしてから答える。



「…吉彦の話からすると、憑かれているのは和尚だろうな。先刻和尚の中には何にも見えなかったが…。まあ、夜中に墓場に行けば判る事だ…。」



言い切っても返答が無く
ちらりと男を見遣ると、静かに目を閉じていた。



…………まさか寝ているのか?



おい、と声をかけても返事がない。



こいつ……話の途中で寝るとは、良い度胸。



「どうなっているんだ…お前は。」



蟀谷(こめかみ)に青筋を浮かべながら
煙管をまた銜えた。











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