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□桜色の君★
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4月。
新年度ともいう1年の始まりであり、春と言えばこの月だ。
朝早く目が覚める。目覚めると暖かく明るい日差しが1番に視界に広がる。
次は鼻腔から神経を刺激するグレイの匂いがグレイんちにいることを思い出させた。
3日前、じっちゃん直々のクエストを依頼されたグレイ。その日には帰ると言っていたがまだ帰ってきてないみたいだ。
グレイがいないとわかると、何か胸が締め付けられる。
グレイの部屋、グレイの匂い。
ますます寂しくなんじゃねーか。
ばっと布団から起き、寂しさを紛らわせるように外にでた。
早足でギルドへ向かうと、まだ昼前だっつうのに賑やかしい。
「ナツー!あれ、グレイは?」
声の方を振り返るとハッピーがこっちへ飛んでくる。
ナツはグレイが仕事に行った日から帰ってくることを期待して毎晩グレイの家へ行ってはそのまま寝て帰ることを繰り返していた。
そんなナツに気を使ってかハッピーはルーシィの家に泊まることが多い。
「あー。まだ帰ってきてねーみたいだな。」
そう返事を返すと、
「きっとグレイは変態だから焦らすプレイをしてるんだ!ナツ、心配しなくてももうすぐ帰ってくるよっ」
といつもの調子で明るくふざけるハッピー。
「くくっ、そうだな。てか、心配なんかしてねーよ。」
俺も明るく返す。
こいつはいつも俺の気持ちを察してくれる。おかげで調子が戻ってきた。
「ナツおはよー!」
「よ!昨日はハッピーさんきゅーな。」
「もう慣れたわ。慣れって恐ろしいもんねー。」
「そんな言い方…!ルーシィひどいっ」
「あ、ごめんごめん。」
俺らのいつものやりとり。
「あ、そうだ!今日すんごい天気いいじゃん?例年より早いけどいつもと違う場所でお花見いこーよって話してたのっ。ナツもいこ?」
「あいっ!お花見の予定なんてなかったんだけど朝早くみんなギルドに来ちゃって、今日はお花見日和だし、みんな意気投合してるんだ!グレイいなくて残念だけど、毎年恒例のお花見はまた後日あるみたいだから、そん時グレイも誘っていこうよっ」
なるほど。だからこんな時間からみんないんのか。
気分転換にちょうどいいかも。
「さすが仲間だなー!うぉー、俺も花見いきてーっ!」
「よし、決ーまりっ♪ミラさーん、ナツも行くってー!」
嬉しそうにルーシィとハッピーがみんなに声をかける。
みんなで花見。楽しい反面、今いない1人の存在を思い出してしまう。
早く帰ってこい、ばーか。