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□中盤戦
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亮はどうして、あんな事になっているんだ。毎日、授業中にみんなを笑わせてばかりいる亮が。無敵の勢いで、あんなにいくつものスポーツをこなす亮が。陽平が筆入れを忘れた時、呆れて笑いながらも一日筆記用具を貸してくれた(席が隣だったから、ていうのがあるけども)亮が・・・今や血を流し、陽平にのろいの言葉を喚き散らしていた。殺してやる殺してやるころしてやる。
「ごめん、梶原・・・ごめん・・・」
陽平はそれ以上耐えられそうになかった。後ろの木立ちに駆け出して、その場から逃げ出した。銃の穴から立ち上る細い煙が、その動きで霧散する。しかしその臭いは、いつまでも鼻の奥にこびりついていて離れなかった。
* * *
「ちくしょ・・いってぇ・・・」
亮は撃たれた右肘を押さえ込み、たまらず呟いていた。脂汗が全身から噴出しているのがわかる。想像以上の苦痛だった。自業自得といえなくも無いが、そんな冷静さは、勿論なくしてしまっていた。
油断なんかしていなかった。確かに、多少侮ってはいたのだけど。こいつになら勝てる、と亮は確信していた。しかしそれどころか、丸腰同然の相手に弾をこめて反撃させる時間まで与える始末。
亮の弾は中々当たらなかった。一発でしとめるどころか、何度照準を直しても、動く的という事もあってかすりもしなかった。
それを鵜飼陽平は、何の苦もなく命中させてみせた。
「―ちくしょう」
まさか陽平ごときに返り討ちに合うなんて、夢にも思わなかった。銃の性能の違いか。あるいわ自分が知らないだけで、奴は射撃のトレーニングでもしてたのか。
だが関係なかった。おれがあいつに、負けて良い筈がない。
亮は知らず知らず、当てるだけ当てといて姿を消したその方向を睨みすえていた。尋常じゃない痛みもあいまって、ふつふつとこみ上げてくる怒り。拳銃を撃ち落した時のあまりに素早い手際に抱いた、一瞬の恐怖。今まで味わった事の無い、その悔しさ。
それは純粋な、正真正銘の憎しみだった。
【残り 36人】
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