ポケモン

□BW番外
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ぴかぴかの帽子にステッキ。
いかにも乙女チックなリボン。


ライモンシティにあるミュージカルで、トウコとベルは親切なオーナーさんから演目のためのグッズを貰った。

「わぁっ、きれ〜い」
「これ、全部ポケモン用なんだ」
「ありがとうございます!オーナーさん」
「ありがとうございます!」
「どういたしまして。お気に召したようで何より!」

ミュージカルで舞台に立つのはポケモンたちだ。トレーナーは思い思いの衣装で愛しのポケモンを飾り、スポットライトを浴びる彼らを見守る。
元気よくお礼をいう女子二人へ、オーナーも楽しげに目を輝かせて応えるのだった。

「それでは早速、レッツドレスアップでございます!」

何だか面白そうだ、と興味を寄せたトウコとベルが「「 おー! 」」と声を合わせる中、


「……!」


二人に勝るとも劣らぬ期待を膨らませるポケモンがいた。





[憧れだしたら止まらない]






トウコが試着室へと向かう間、メグロコは待ちきれなくてボールをかたかた揺らしていた。

ドレスアップ!なんて良い響きだろう。しばらくヒウンで暮らしていたメグロコは、色とりどりの服装に身を包む人間たちを観察するのが好きだった。こんな楽しそうなものを、見過ごす手はない。

そんなメグロコの耳に、空気の読めないトレーナーの嬉々とした声が飛び込んでくる。

「この色!この形!この大きさ!」

トウコがケラケラ笑って掲げているのは、顔につける「赤い鼻」だ。

「こんなのもう、あんたの為にあるようなもんじゃんミルホッグ!ドレスアップするよ」

なんでだよ!!

トウコが自分ではなくミルホッグを選ぼうとしているのを知り憤慨したメグロコは、怒りに任せてボールを蹴り破った。

いきなり出てきたメグロコにトウコは目をひんむいて驚く。その隙にメグロコは尻尾でトウコの手元をスッパーンと一閃。ミルホッグの入ったボールをすっ飛ばしてしまった。

「ムワアアァァァァァ」という悲鳴が聞こえたような気がするが構わず、メグロコはトウコに向かってぐうぐう鳴いた。

「ちょちょっ…!何してんのメグロコ!?」
「ドレスアップはアタシがやる!やるったらやる!」
「まさか、あんたが鼻つけたいの?」
「できればハナじゃないやつがいいんだけどッ…!」

トウコは驚きから覚めると、考え込むように首を傾げてメグロコを見た。
人間にはポケモンの言葉が通じない。トウコからは、メグロコが「ぐぅぐぐぐ!」と一生懸命唸っているようにしか聞こえないのだった。

「そっか、女の子だもんね。よーしやろう!」

しかしメグロコの熱烈アピールを目にし、彼女が何を言わんとしているのかを大まかに察したトウコは、そう告げる。

「…だから謝りなよ?」

そして、試着室の隅っこでプンプンしながら弾んでいるミルホッグのボールを指差すのだった。





ドレスアップをはじめたメグロコは、手始めにちょうちょ結びの小さなリボンを頭につけてみた。あらかわいい。

「でも邪魔……」

メグロコは頭に乗っかったそれを鏡で眺めて、率直に呟いた。ちょうちょ結びの羽根の部分が、メグロコのビーズのような目にあたって痛い。しかし自分の身体の部位でまともにつけられるのは、そこしかなかった。あまり相性がよろしくないアイテムだ。
ムムム…と別のアイテムを選んでいるメグロコに、横からトレーナーのちゃちが入る。

「ねーメグロコ。これ付けようって。絶対ウケるから!」
「うっさいなぁもう…そんなウケ狙ってないっつの」

さっきから丸い赤っ鼻をプッシュして憚らないトウコへ、メグロコはぐぅぐぅと返事をした。可愛らしいリボンや宝石を差し置いてそんなゲテモノを気に入るなんて、こいつのセンスはどうなっているのだろう。
そこへ突如「ぐわあああッ!」という喧しい声があがった。

「ぐぐ…強い…ッ。この勇者フタチマルの攻撃が、通用しないだと…」
「フフフフ…今のはメラゾーマではない…メラだ。」
「な、なんだって!?」

絶望に打ちひしがれた形相で、剣のグッズを握るフタチマル。対するミルホッグは紳士用のステッキを手に勝ち誇った笑みを浮かべている。メグロコは思わずそいつらに文句をたれた。

「うっさいよ、アンタたちも。選んでるんだから、グッズ持って行かないでよね!」
「この剣は、おれっちの方が似合うぞ!ちょっとくらい良いじゃん」
「そーだよ良いじゃん。ねぇさんは、そういう可愛い系統でいくんだろー?」

勇者ゴッコを中断させられたフタチマルとミルホッグが、ぶーぶーと不満を申す。
しかし不満を言いたいのはこちらの方だ。やっている事はバカバカしいが、フタチマルの剣とミルホッグのステッキは悔しい事にお似合いなのだった。真剣にドレスアップを試みている自分よりもこいつらの方が様になっているなんて、どういうことだ!













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