ポケモン
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8.宝石ひとつ
電気石の洞窟へやってくると、トウコたちは内部のありように驚いた。
青白い電気を帯びた岩が、重力を無視して浮かんでいる。途中出会ったアララギ博士いわく「ポケモン好みの電気」の力で、岩や石は浮かんでいるらしい。だが、興味しんしんでその岩をつっついたフタチマルは、とたんに「フビビビビビ」と痺れて動かなくなった。かわいそうなので、フタチマルはボールの中に避難させてあげた。
一方、つつかれた岩はスイ〜っと宙を滑って移動した。「おもしろい!」と夢中になったトウコは、不思議な岩を押しまくり洞窟を進んでいく。
かっ飛ぶ大岩…!痺れる電撃…!怪異の洞窟…!これぞ冒険だ。
しかし、そんな浮かれるトウコの前に水を差す人物が現れた。
「…来い。……この先に、下りの階段がある」
暗がりの中から音もなく姿を現したのは、ダークトリニティと呼ばれるお兄さんだった。驚きで腰を抜かしそうになるトウコに構わず、彼は洞窟奥の階段を示した。
洞窟に入るなり鉢合わせたNによれば、このダークトリニティもプラズマ団の一員だという。しかし、いつもの団員達とは調子が違うせいで、そんな風には感じられなかった。
マスクで半分覆われた顔からは感情が窺えず、人間らしさの欠片も見つけられない。「いきなりシュバッて現れるのはどうやってるんだろう」とか「切羽詰ったら、やはりプラーズマーと叫ぶのか」などと、迂闊に聞き出せない雰囲気があった。
「そこでプラズマ団がお前を待ち構えている」
「えー……。それ本当にやるの?」
ダークトリニティは、トウコの言葉などひとつも聞いちゃいなかった。用は済んだとばかりに、その場からシュバッといなくなってしまう。
旅路の途中で繰り返し鉢合わせた結果、とうとうプラズマ団に目をつけられてしまったようだった。ここでプラズマ団が待ち構えているのも、自分を試すためらしい。
『大事なものは守らないと ね!』
ここへ来るまでに聞いた、ベルの言葉が蘇った。
「めんどくさい……なんて、言ってられないよね」
「試す」とは一体、何をしてくるつもりなのか。正直、そんな風に言われてしまうと不安だ。
でもヤツらの好きにさせて、禄でもない目に合うのはごめんだった。最悪、フタチマルたちを奪われてしまうかもしれない。
「みんな、いける…?」とカバンにたずねれば、四つのボールは飛び跳ねるような動きをした。そしてすぐ静かになる。
その意味を汲み取って「じゃ、いくよ」と声をかける。トウコは階段を降りていった。
* * *
「やってきたね。よくきたね!君にこれをあげちゃうよ!」
「お前、誰かに操られてここまで来ただろう」
「…なぜだ?お前のポケモンはお前の隣りで嬉しそうだな」
「僕もこれをあげちゃうよ!」
「あなたたち普通のトレーナーがポケモンを使うのは悪いこと!」
「Nさまは、誰よりもポケモンの事をお考えになっているの!」
「有効に活用してくれ!なんたって弟よりすごい―」
「あなた!ポケモンを逃がしてトレーナーをやめなさいよ!」
「それでいいのか?ポケモンはトレーナーの道具か?」
「有効に活用してくれ!なんたって兄より立派な―」
* * *
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