ポケモン
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2.熱い視線
アララギ博士のところへ赴くと、三人はポケモン図鑑を託された。
イッシュ中の、全てのポケモンと出会う旅!トウコは幼馴染とともにその申し出を受けたが、内心は不安でしょうがなかった。
ポケモンを探し求めなきゃいけないの?自分から?
誰にもばれないように、トウコはこっそり身震いをする。
そうして今、チェレン、ベルと並んでカノコの出口へと立っている。
ここから先は、一番道路。野生のポケモンが飛び出す草地の道だ。はるか向こうへ続く丘や草原を眺めていると、ふいにベルが「トウコ!チェレン!」と声をかけてくる。
「私たち、旅人でトレーナーになるんだねぇ。ねぇねぇ!最初の一歩は、三人でいっせいに出発しようよ!」
ベルらしいなぁ。トウコは笑って二つ返事をした。淡々と肩をすくめるチェレンは大して気がのらない様子だったが、「悪くないかもね」と頷いた。こいつのことだから、それよりも先に進みたいのだとトウコは察した。一刻も早く草むらに我が身をシュウゥゥゥゥゥーーッ!超!エキサイティン!したいに違いない。チェレンらしいなぁ。
「トウコさ、またおかしな事考えてるよね?」
「別に。何よ、それ?」
「はいはい、二人とも行くよ〜」
「いっ」「せーの」「ーで!」
ぼすん。
花びらが舞うのどかな道に、新人トレーナーたちは足を踏み出した。三人は何となく顔を見合わせ、照れくさそうに笑う。
その後アララギ博士よりポケモン捕獲の手順を教わった三人は、程なくしてポケモン勝負を始めた。といっても、戦わせる方ではない。誰が一番多くポケモンを捕獲できるかを競い合う勝負だ。
「よーし…よし……やったろうじゃん…」
意気揚々と先に行く二人の背中を見送ってトウコは言う。だが言葉とは裏腹に、気合が感じられない。むしろ自信がないのが丸わかりの、びくびくした声色だ。
既にバトルをこなしているにも関わらず、トウコは草むらを前に固唾を飲んでいた。この先にいるのは誰の言うこともきかない、野生のポケモンだ。それを考えると体が強張って仕方がなかった。
「ミジュー?ジュジュジュミィ!」
「わ、押すなこのホタテ!」
ミジュマルはぐるりとトウコの後ろに回りこむと、ふくらはぎを両手でばすばすと押してきた。いつまで経っても先へ行こうとしないトウコに痺れを切らしたようだ。
―いや…!ここは嫌がっていてもしょうがないじゃん…!
自分はもうトレーナーなんだ。そう言い聞かせると、いくぶん肩の力が抜けた気がする。
トウコは大きく息を吸い込むと、大股で一番道路を歩きだした。「ホタテ」と呼ばれたミジュマルが、頬を膨らませながらも彼女に続く。(当初トウコはそれをニックネームにしようとしたのだが、ミジュマルがふくれっ面で嫌がるので断念した)
その時、ガサガサと葉のこすれる音が鳴る。急いで振り向くと、独特な毒々しい両目とかち合った。
野生のミネズミだ。こっちを見てる。
「ミジュマル…」
「み?」
黙り込むトウコを、ミジュマルは不思議そうに見上げる。第一村人発見。そう茶化そうとしたのに、上手く声が出せない。
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