ポケモン

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惨劇の犯行現場と化した自分の部屋を降り、一階のママと話をつけに行く。新人ポケモントレーナーとなった3人の子どもたちは、恐る恐るママに上の有様を報告するが、ママは「いいのいいの!」と笑って済ませた。

「それじゃ、アララギ研究所の前で。またね」
「ベル、遅れちゃダメ、ゼッタイ」
「はぁーい。がんばる」
「「頑張れ」」

三人は近所のアララギ研究所へ、ポケモンたちのお礼を言いに行く事となった。チェレンはそのまま研究所へ向かい、ベルは両親に報告をしに一旦戻っていった。最初のポケモンを渡されるというのは多くの場合、故郷からの旅立ちを意味しているからだ。
礼儀正しく挨拶をして二人が行ってしまうと、トウコは改めて母親を見上げた。

「ママ、見てないだろうけど…部屋ホント凄いよ…?」
「ふふふ、そうよね。ここまでポケモンたちの元気な声、聞こえてきたもの!」

そんなの気にしなさんな、と言った具合の母親の様子に首をかしげる。いつもは口うるさく「散らかしっぱなしよ!」と叱ってくるのに。やけに嬉しそうな、変なママ。

「それよりトウコは、ミジュマルを選んだのね」
「選んだって言うか何ていうか」
「ミジュマルちゃん、うちのトウコをよろしくね」
「ミジュッス!」

ミジュマルは頭をなでられてテレテレしている。ふい、と母親の顔がトウコを見上げた。

「…緊張してる?」
「へ、」
「だいじょーぶよ!ママもはじめての旅はドキドキした。緊張してすっごく嬉しかった。これから何に会えるんだろうって…」

そっか。とトウコは小さく笑った。勿論トウコだって嬉しいし、ドキドキしてる。けど別の感情もあった。それと同じくらいの、正反対の感情が。

「ポケモンが一緒だもの。トウコがその事さえ忘れなければ、きっとあなただけの素敵な旅になるわ!……でもね、無理しちゃダメよ。何かあったらすぐ帰ってきてもいいの」
「…うん…サンキュ!ママ」

トウコは思わずママにぎゅっとハグした。もしかしなくっても、ママには判っていたのだろうか。たぶん、判ってるんだろうな。
母親も同じように両腕を回して、一人娘を抱きしめた。その間に挟まれたミジュマルはきょとんとして、親子を交互に見上げている。



「いってらっしゃい。気をつけてね」


















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