ポケモン
□エピローグ
1ページ/1ページ
上空に、一つの灯火があがった。
晴れ渡った蒼穹の下、シュネは一人の敵兵にとどめを刺していた。敵兵が最後に残した言葉は、己ではなく、己の相棒と見受けられるルカリオの命乞いだった。
それを聴くと、彼は嗤った。
微塵も気がついてはいなかった。空に上がる破滅の足音にも。己が零す愉しげな面持ちにも。
「笑わせるな。お前が最初………次にコイツだ」
一人の王が、破壊の神となったその日。
大きく高く上がった灯火は、それでも、シュネの冷たくなった心に映りもしなかった。
* * *
その灯火は、まるで昼間の彗星だった。
城外の施設から表に飛び出したメーアは、その輝きを見た途端、彗星の規模を計り知った。
あんなに遠い上空から、あんなに大きな光を湛えて――一体、どれほどのエネルギーを纏っている事か。
彼女は理解した。この後自分に―自分を含む全てのものに何が訪れるのかを。ああ、と思わず感嘆の声をこぼす。
「きれい……」
一人の王が、破壊の神となったその日。
メーアは立ち尽くして、その光に最後まで見惚れていた。
* * *
その彗星は、大地を噛まんとする勢いで落下していた。
そう気がついたクリドは、戦慄しながらも傍らのギルガルドとそれを見守った。ほぼ真上だ。
もうどうしようもない。そう直感した。逃れるにはあまりに広大で、呪うにはあまりに美しかった。
「なぁ……」
彼は小さくギルガルドに声をかけた。「キシン……」と不安げな声が返ってくる。
「お前には、苦労をかけっぱなしだったな…」
光の落下する音が聞こえる。戦の喧騒をぬって、高く響く。
一人の王が、破壊の神となったその日。
クリドにはその音が、何百、何千もの命の悲鳴に聞こえた。
* * *
その日。
光は全てを飲み込んで
何も残さず、消し去った。
終