ポケモン

□Pkmn
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3 波ノリ



シャラシティから外れ、綺麗な花畑が並ぶ海辺の通りを過ぎると、カルムは足を止めた。

「あれ」

行く手には海が広がっていた。ずっと向こう側に緑の陸地と道路の看板が見える。しかしぐるりと見わたしてみても、橋や船の類はない。
カルムはちょっと困って頭をかいた。泳げってか。この距離ならできなくないだろうけど、疲れそうだなぁ。

「もっとこう、スタイリッシュに渡れないかな」

「ねぇ、君!旅のトレーナーかい?」

そう声のした方を振り向くと、見知らぬ男が立っていた。

「あ、ハイ」

「そう。じゃぁピッタリかもしれないな!」

男は何やらニコニコしながらモンスターボールを取り出して、ポケモンをだした。バトルか、と思ったがどうやら違うらしい。すぐ傍の海面に、大きな青いポケモンがゆったりと浮かんだ。

「お?こ、これはまさか、噂の青い悪魔と恐れられるマリルリ?」

「ブッブー!このポケモンはラプラスというんだ。とても賢くて大人しいポケモンだよ」

へー、と感心しながらラプラスを見上げる。ラプラスは大きくて優しそうな目でじっとカルムを見おろした。

「君さえ良かったら、このラプラスを旅の仲間にしてくれないかな?」

「へっ?くれるんですか?」

「うん。ぼくよりも旅のトレーナーの方が、このコに色んな景色を見せてあげられるしさ。ラプラスに乗った少年ていう歌、知ってる?」

「あー・・・なんか、名前だけは聞いたことあります」

「なみのりという技で、海の上もスイスイ渡れるんだ。ラプラスの背中はとっても乗り心地が良いよ」

なみのり!それならこの先に進めるじゃないか。渡りに船ならぬ、渡りにラプラスだ。しかも優しそうでどこか貫禄のある姿が中々よさ気だし、ちょうど手持ちに水タイプがいない。

ところが、カルムが何かを言う前に、手持ちのモンスターボールを収めている所がガタガタと動き出した。あまりに猛烈な動き方に心配になって覗いてみると、どうやらエレザードのボールのようだった。つい先日貰った太陽の石で進化したばかりの、元エリキテルだ。

「何?トイレ?」

よく分からないままとり合えず外に出す。しかしトイレの危機的状況でも何でもないようだった。エレザードは「キィエェーイ!」と大きく叫んで、カルムのカバンをどつき始めた。怒ったように何かを訴えている。
どうやらどついているのは、技マシンポケットのようだった。カルムがそのポケットを開けると素早く飛びつき、一つのマシンを取られてしまった。

「あっ!ちょっと、何してんだ!」

カルムは慌ててそう言うものの、エレザードはなおもしきりに何かを訴えている。口にくわえているのは、なみのりの秘伝マシンだ。一体どうしたというのか。ポフレ欲しさに狂ったのか?

「何が言いたいんだねお前は」

「あぁ、そうか。なみのりだよ!」
傍にいたラプラスのトレーナーはいち早く合点した様子で、エレザードに笑いかけた。

「このコはきっと、ラプラスを使うくらいなら、自分がなみのりを使いたいんじゃないかな?」

「えぇ、何でお前が?」

「エレザードは確か、なみのり覚えたよ?」

「え!?」

ホント?と目をむいて訊くと、エレザードは果たして得意そうにうなづいた。安心したかのようにトテトテと戻ってきて、秘伝マシンをカルムの腕に押し返す。「さぁ!はよ!」という感じに一声鳴いて腕を広げた。

「いや、でもさぁ・・・」

ちらっとラプラスとラプラストレーナーの方を向く。ラプラスは優しげな声で一声鳴き、トレーナーも同じような優しげな声で「どうやら君には、すでに立派な波乗りポケモンがいるようだね!」と気を使っている。

「いきなり無理を言って悪かったね。道中お気をつけて!トレーナーさん」

「あ・・・いえ・・・ありがとうございました・・・」




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