ポケモン
□Pkmn
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「うん?そっか…」
青服は頭をかきながら自分のバックをじっと見つめた。多分そこに、そいつのポケモンが入っているのだろう。やがて顔を上げると、さっぱりとした口調でこういった。
「まぁその内。適当にね」
一瞬の間の後、他の二人が猛烈な勢いでまくし立てるように青服を諭しはじめた。しかし青服は大して気にした様子も無くそれを聞いている。ルカリオは何となくその青服にシンパシーを感じた。
そうだよな。何事も適当にこなすのが一番だ。
「おーい」と呼ぶご主人の声が聞えて、その日は5番道路を後にした。そのトレーナーの一言に、ルカリオはしばらく気分良くいられるのだった。シャラで相方ルカリオとハリテヤマに吹っ飛ばされるまでは。
「お前は何だって、あのトレーナーをそんなに気に入ったんだ?」
静かな海に佇む塔の上で、相方ルカリオはそう訊いてきた。満天の星空の元、二匹はご主人と共にメガリングを託すトレーナーを待っている。そいつとポケモンたちは、すでにジムでご主人をくだしていた。
「ふふ。それはだな、奴らならおれを更なる高みへ向かわせてくれると確信し」
「嘘つけサボれるからだろう」
この野朗、わかってるのならわざわざきくな。相方はあきれ返った様にため息をついた。
「あいつらの仲間になって、これ幸いと逃げ出すわけか?そこまで情けない奴だとは思わなかった・・・」
「何とでも。俺はのんびりライフを楽しむために生れてきたオスなのだ・・・ご主人の笑顔と別れるのだけが残念だ」
本人たちがいもしない内から、一緒に旅立つ気満々である。セキタイで再会した時に、ルカリオはほぼ気持ちを固めていた。そこで何故かバトルになった際、相手のポケモンたち(会うたびに一匹ずつ増えていた。今じゃ三匹いるようだ)の話を訊いてみたのだ。彼らのトレーナーは「バカだけどいい奴」「やる気がないけどいい奴」。旅の道中は「ユルいけど快適」「全然進まないけど平和」とのことだった。
なんでもそいつはポケモン図鑑なるものを完成させるという、結構重要な事を任されているにもかかわらず、ずーっと道草を決め込んでいたらしい。これと言った目的も目標も掲げておらず、じつに「適当に」毎日を過ごしている。これぞ理想。自分は人生(獣生か?)のセカンドステージを昇るチャンスをむかえたのだ。「修行無し。三食昼寝つき」という人生を。スルーしてなるものか。
「な、情けなさ過ぎる…お前の顔は当分見たくない」
「おれもお前の脳筋面とはここでオ☆ルヴォワールだ。せっかくだから最後に一発バトってやるよ」
「ああ、わかった…最後に本気でボコボコにしてやるよ…」
そうこうしている内に青服がやって来た。そいつはメガリングを受け取り、「しゃきーん…」とポーズを決め込んで満更でもなさそうにしている。「どう?」と自らのポケモンたちに尋ねると、ハリボーグは「ぐがーっ」といびきで返事をし、エリキテルは「おれも欲しー!」と羨ましがり、ヤミラミは「…宝石なんてくそくらえッ!」と呟いた。相変わらず、どいつもこいつも覇気の欠片もない。
そんな青服にさっそく連れて行けアピールをすると、またもやご主人のノリによってバトルする流れとなった。「1or1の、メガシンカバトルだよ!」といって、あれよという間に宣言どおりのお別れ戦が始まる。
「いくよ、ルカリオ!命ばくはつ!」
「任せろ、ご主人。お前、覚悟しろォ!」
「よろしく、ルカリオ!」
「これで三食昼寝つきだ、ヒャッハー」
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