ポケモン

□Pkmn
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 通りすがりの少年でうさ晴らしをはたしたヒビキは、いくらか気を良くしてフタバタウンへと戻った。
 そうして何気なくこの町の看板をみやると、とんでもない事実が書かれているのだった。



ここは ワカバタウン
はじまり つげる かぜのまち




「ワカバ・・・?」

 なんと、ヒビキは生まれ育った町の名前を間違えていたのだった。

「ふっざけるな!明らかに俺じゃなくて、誰かのせいだろーが!!」

・・・ごめんなさい!(すみませんでした)



*    *    *





 研究所に入る。てっきり博士が一人で騒いでいるのだとばかり思ってたので、そこにおまわりさんがいるのを見つけてびっくりした。

「本官現在、ポケモンの窃盗事件を捜索中!てことで、いま立ち入り禁止だよ」
おまわりさんはヒビキに気がつくとそう言った。

「あ、違う違う。彼は僕が呼んだんです」

「どしたんですか?」

「それがちょっと目を離した隙に、ポケモンを一匹盗まれちゃったんだよ!」

 博士の言うとおり装置の上には、出て行く時に2つあったモンスターボールが1つになっていた。
 すごい物音がして助手と二人で外に出た、少しの間だったという。

「あらら!本当に一大事だったのか」

「そりゃそうだよ。もー動転しちゃって、知ってる番号に片っ端からかけちゃったよ」

「やめんか!イタ電だろーがそれ!」

「ふーん、博士に電話をかけれるようなお友達がいたんだ。びっくりだね!」

「「うわっ」」

 ぬっ、と現れたコトネに驚いた二人は、彼女の辛辣な一言に気づかなかった。

「いたの?」

「今きたよー」

「こらこら、本官現在、ポケモンの窃盗事件を捜査中・・・」

「あんまり頼りになりそうに無いおまわりさんが入ってくの見たから、教えなくっちゃと思って!」

「こらこら、そんな事はない!捜査の鉄則その1、犯人は現場に・・・」

「うわ、マジで使えなかった・・・あたし見たんです!まっ赤な髪の男の子が、この研究所を朝からじーーーーーーーーっと覗き込んでるのを!」

「あ・・・そうなの・・・」
 しょぼん、となってるおまわりさんを尻目に、ヒビキも今朝方の事を思い出して言った。

「俺も見たそいつ!ていうか、さっき会った!ワニノコを連れてたよ」

「ほ、本当かい?盗まれたのはワニノコなんだ!」

「ガラ悪いと思ったけど、まさか泥棒だとは・・・」
 ヒビキはさすがに良心が痛んだ。あの赤毛を見かけた時、明らかに怪しいと思ったのに。こんな事なら、やはり忠告してやればよかったな・・・あのサボりな助手くんに。
「あいつ、ソウルって名前だよ。トレーナーカード見たんだ」

「ふむふむ。ご協力、感謝します!では本官の次の行動は、赤い髪の人物を追え!」

「頑張ってくださーい。全然期待してないで待ってますね!」

「 (´゜ω゜`) 」

 コトネにぼろくそ言われたおまわりさんは、どこかトボトボとした足取りで立ち去った。

「疑いが晴れてよかったね!ヒビキくん」

「いっさいどこも疑われてなかったけど!?」

「細かい事は気にしちゃダメ!」

「なんかすっごくかわいそうだぞ、おまわりさん・・・」

「細かい事は気にしちゃダメ!じゃ、あたしは行くねー」

・・・何しに来たのだ。
 呆れて見送る中、やつは鼻歌混じりに帰っていった。

「ヒビキくん・・・大変な目にあったよ・・・」

「ご愁傷様っす・・・」

 そりゃ、大事なポケモンが盗まれれば落ち込むだろう。何しろポケモンバカ・・・もとい博士だものな。
 ヒビキはぽつんと一つ残されたボールと装置を見る。よく見ると、もう盗まれないように透明な壁が取り付けられていた。・・・あそこには恨みを買ったチコリータがいるはずだから、壁で覆われていると何となくホッとした。

「・・・あ、思い出した。そういえばポケモンじいさんの方はどうだった?」

 そういう博士の言葉に同じく思い出したヒビキは、カバンからそっとポケモンのタマゴを取り出した。

「これ、何が産まれるんすか?」

「フーム、僕も知らない種類のものだなぁ。けど見た限り普通のタマゴだよ。今時ポケモンのタマゴで驚くなんて、じいさんも相変わらずだなぁ・・・」

 どうやら博士も見ただけではわからないようだった。折角だから、とそのまま博士が調べることになった。さらば、タマゴ。
 タマゴはともかく、ヒビキには別れがたいやつがいるのだった。

「お使いご苦労様、ヒビキくん。ヒノアラシとは仲良くなれたかな?」

「そーりゃ、もう!オーギト博士にも褒められたくらい!」
 その後の不愉快な思い出を振りかえり、声を低めて付けたした。
「・・・そのせいで、まっ白図鑑を押し付けられたけど」

 ポケモンじいさん宅での出来事をヒビキはここぞとグチった。ところが意外な事に、ウツギ博士が驚き嬉しそうな反応だった。

「オーギト博士?図鑑ってまさか、ポケモン図鑑かい?うわーっ!すごいじゃないか、ヒビキくん!オーギト博士は、トレーナーの才能を見抜くすごい人なんだよ?・・・これは、面白い事になったね・・・!」

「空っぽの図鑑押し付けられるのが?」

 ていうかウツギ博士の口ぶりだと、あのノリで図鑑を渡された人間が他にもいるのだろうか・・・。トンデモ博士だな、全く。

「ヒノアラシも随分君に懐いてるようだし・・・どうだい、ヒビキ君。このまま各地のポケモンジムに挑戦してみるってのは?」


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