ポケモン
□Pkmn
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「ん?なに」
「・・・お前、さっきウツギ研究所でポケモン貰ってたな」
そいつは同い年くらいの少年だった。派手な赤毛に、ガンをつけてるとしか思えない顔。なかなか関わりたくない感じだ。
「貰ったというか、借りただけ。何で知ってんの?」
「フン・・・お前には勿体ないポケモンだぜ」
感じ悪ぃなこいつ。ヒビキはむっとしたと同時に、いきなり思い出した。
「あー、お前こそさっき、研究所のとこにいただろ。覗き魔?」
「誰が覗き魔だ!」
「ありゃ覗きだろー。窓の外から熱心にさ。何してたの?博士のファン?」
それならよく考え直すべきだ、と言おうとしたが、赤毛は腹立だし気に「ふざけるな」と否定した。その返答にヒビキはちょっと満足した。だよな。
しかしそれを見て赤毛は、逆に怒ってしまったようだった。
「何がおかしい。フン、俺も今ちょうど、そこから「借りて」きたところだ」
そういうや否や、赤毛はモンスターボールを投げポケモンを繰り出した。なんだか見た事のある、ワニっぽい水色のポケモンだ。
「弱いヤツが生意気ぬかすとどうなるか、教えてやる!ワニノコ、ひっかくだ!」
ワニノコは慌てたようにこっちを向くと、小さな腕をあげて飛び掛ってきた。ヒビキとヒノアラシは仰天してあわやその一陣をかわす。
「ちょっ!トレーナーごと吹っ飛ばすな!鬼かてめー!」
ヒビキは猛抗議した。「ポケモンバトルに人が加わってはいけません!」とさっき教わったばかりの事をそいつに言ってやる。
「うるさい、戦え!」 それが返答だった。
はじめてのトレーナーバトルになった。
相手のワニノコは初戦闘なのか、なんだかうろたえてる様で動きが鈍かった。大してこちらはいくらかレベルも上がっていたので、ほどなくして勝負はついた。
「おぉ!勝った」
「・・・フン、勝てて嬉しいか?」
「それはもう」
うぇーい、とヒビキとヒノアラシは一緒になって赤毛にピースをみせつける。
しかし赤毛はそれすら目に入らないほど怒っていた。負けたのが相当悔しいらしい。
「弱いくせに少しはやるな・・・だが俺は、最強のトレーナーになる男だ!次に会ったら、こうは行かないからな」
そう言うと嵐のように去っていった。
勝った相手に弱いと罵られたヒビキは、むしろ感嘆してその背中を見送った。なんとポジティブな野朗だ・・・おれだったら、負けたそばから「最強になる」なんて思えない。
「見習わなきゃなぁ・・・ん?」
ふと下を見ると、地面に見慣れないものが落ちていた。カードのようなそれを拾って見ると、赤毛がうつってる。プロマイド・・・じゃなくてこれは、トレーナーカードだ。あらら、こんの落としちゃダメだろ。
なになに・・・あいつ名前はソウルというのか。
人の個人情報を一通り眺めて裏を捲ると、そこにはでかい文字で天地無双と書いてあった。やつが書いたのだろうか。ちょいと痛いナ、これは・・・
「しかし、ベタだな」
ありがちでつまらない、と感じたヒビキはそのらくがきを躊躇なく消した。そしてなにやらきゅっきゅっ、とやりだす。そこには水曜どうでしょうと書き直されていた。
程なくして顔を上げると、ずだだだだっと乱暴な足音をたて本物が戻ってきた。
「返せ、てめー!まさか見てないだろうな・・・!」
息せき切った様子で自分のカードをひったくると、怒った顔で睨みつけてきた。怖い。筋モントレーナーかこいつ。
「見てないよ全然。人様の個人情報じろじろ見るわけないだろ」
ヒビキは堂々と言い切った。
「・・・フン。まぁどうでもい」
どうでもいい、と言おうとしてそいつは自分のトレーナーカードの裏を見ると、カチンと固ってしまった。ヒビキはポーカフェイスでそれを見守ったが、心の中では大爆笑である。
「じゃっ、ちゃんと返したから!もう落としちゃだめだぞ、ソウル!」
「てめぇぇぇ!やっぱり見てんじゃねーか!」
蒸気機関のようにブチ切れるそいつを残して、ヒビキとヒノアラシはダッシュで逃げ出した。
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