ポケモン

□Pkmn
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あらすじ:
いせきのかけらをぶんどられたパートナー(ポッチャマ)と主人公(ヒトカゲ)が、ズバットたちを追いかけましたとさ。











海岸の洞窟は、その名の通り海辺に面した位置にある洞窟だ。
ポッチャマの持っていた石ころを横取りしていった意地悪ズバットと意地悪ドガースは、この先にいるようだ。

薄暗くひんやりした洞窟内では、岩壁や天井から水滴が降り落ちている。至る所がびしょ濡れだ。

「帰ろうか」
「待って待って!待ってよぅ!!」

しっぽの炎の危機を感じ取った元人間のヒトカゲは、すぐさま回れ右をした。飛びついて彼を引き留めたポッチャマは、必死なあまり涙ぐんでいる。

「お願いだよ、協力して!あれはボクの宝物なんだ!」
「でも、ここ…明らかにおれと相性が悪いよな」

勢いのまま手を貸すことを承諾してしまったヒトカゲは、不安でごくりと喉を鳴らす。
本当はそれどころじゃないのに。というかこちとら、もとはただの人間なのに。慣れないヒトカゲの身体でこんな冒険をおかしていいのだろうか。

「大体、あんな石ころが本当に宝物なの?ほんとーに?」

海岸で絡んできたズバットとドガースに対し、ポッチャマは何も言わずにぶるぶるしてるだけだった。でもそんなに大切なら、あの時点で何としても取り戻そうとするのではないか?

「さ、さっきは怖くて、何にも言えなかったけど……でも、とっても、……とても大事なもので…」

どうしても取り戻さないと、と情けない声で繰り返すポッチャマは、やはりぶるぶる震えている。さっきと全く同じ有様だ。
こんなになってまで頑固にこだわるなんて…とヒトカゲはため息を吐いた。だがまぁ、諦められずにこうしているということは、あれを大切にしているのは嘘じゃないのかもしれない。

「でもさおれ、あんまり役に立たないと思うなぁ…」
「そんな事ない!一緒にいてくれるだけでいいから!見てるだけでいいから…!」
「見てるだけって。意味ないだろ帰っていいだろ」
「ダメッ!怖いい!一緒にいてよおお」
「わ、わ、わかったから、リアルしおみずふっかけるなよっ!」




* * *





洞窟はそこそこの深さしかなかった。程なくして2匹は、目当ての後ろ姿と再会する。

「なんだ。誰かと思えば」
「さっきのよわむしくんじゃないか!」

足音を聞きつけて振り返ったドガースとズバットは、ポッチャマに気づくと意地悪そうに笑った。

それまで一刻もはやくドガースたちに追いつこうとしていたポッチャマだが、彼等のそんな顔つきを前にした途端、またもや無言のぶるぶる状態になってしまった。
ヒトカゲはそんなポッチャマとドガースたちを交互に見比べ、小声でポッチャマへ尋ねた。

「……おい、どうしたんだよ。さっきまで前のめりだったくせに」
「……うぅ」

それきり何も言わない。意固地に尚ズバットたちへと向けられる目には、気弱な色がありありと見て取れる。自分の気持ちよりも、彼らに対する恐れが勝ってしまってるのだろう。

「返せって、言わないのか?」
「う……う…」
「言ってやれよ。大事なものなんだろ」
「……うぅ〜」
「ほれ、せーのっ!」
「か、か、かかぅぅ」

それを聞いたズバットたちは、ゲラゲラ笑いだす。
ドガースもズバットも、返せと頼んで素直に返してくれるような輩ではないだろう。そんな事は、はじめから分かりきっている。

俯くポッチャマをじっとみていたヒトカゲは、やがて声をかける。

「そんなじゃ、返してもらえないって……諦めようぜ。石ころはまた探せばいいだろ?」
「……!」

泣きそうに揺れていたポッチャマの瞳が、ハッと見開かれる。

「よ、良く、ない…」
「ほんとか?」
「うん……うん…!ボ、ボク、諦められないよ」
「じゃあもう一回、せーので言えるか?」
「い、い、い、言う…!」

軽い打ち合わせを終えた2匹は、違う方の2匹へと向き直った。
「せーの」の掛け声で、大きく息を吸う。

「ぬ、盗んだものを……盗んだものを返してよ!」

あれは、とても大切な宝物なんだ。
やっとの事で言い放った己の本心が、ポッチャマに勇気を与えた。気がつくと、震えが治まっている。
ヒトカゲも何故かホッとした気持ちになって、パチパチと拍手を捧げた。

しかし当然のごとく、意地悪2匹組はポッチャマの小さな勇気に全く関心を示さない。

「ほお、宝物?ってことは、あれはやっぱりお値打ちモノなんだな?」
「けっ。そんならますます返せないな!」
「売っぱらえば、いい金になりそうだ!」
「ええぇ〜〜!!?」
「いや、なんでそんな驚くのさ…」

返して貰えずにショックを受けるポッチャマへ、ヒトカゲのツッコミが入る。ポッチャマは信じられないといった様子で言い返した。

「な、なんでって!大切なものって判れば、返してくれるはずじゃないか!普通なら!盗んで売り払うなんてひどいことする?」
「何言ってんの。こいつらがフツーに見えるか?」
「いや見えないけど」
「そんな良心を持ち合わせた、常識あるヤツに見えるか?」
「ううん」

ヒトカゲたちの無遠慮な問答に、ドガースとズバットはムカチンと青筋をたてた。

「そうだろ。おれなんか一目で察したぞ、こいつらは碌でもないちんぴら野郎だって」
「ほんとに?す、すごいよヒトカゲ!」
「ふふふん」
「おめーらだ、ちんぴらは!ケンカ売ってんのか!」
「いや、ケンカ売ってきたのはそっちだろ」

プンスカ怒ってガスを撒き散らすドガースへ、ヒトカゲは反論した。

「で、そのケンカを買うのはポッチャマだからな。おれは関係ないから」
「え?……え!!??ええええ!!!なんで!!」
「なんでって。さっき見てるだけでいいって言ったじゃんか」
「言ったけど……そ、そんな〜〜!!」

冷たく切り離されたポッチャマはとたんにベソをかき、勢いよくヒトカゲに掴みかかった。メソメソしているくせに、動作は怒りに満ちている。

「こんな所まで付き合わせて、悪いと思うけども!ここまで来たら、お願いだよ!もうちょっと、もうちょっとだけボクの味方でいてよ!空気読んでよ!」
「いだだだだ、わかったって!お前、なんでおれには強気な感じなの?その態度をあいつらに向けろよ!」
「できるんなら、とっくにしてるよぉ!」

ぎゃーすか、ぴーぴーと2匹はいつの間にか言い争いをはじめた。
ドガースとズバットはどこか困ったように顔を見合わせる。「返して欲しけりゃ、力ずくで来てみろ!」とふっかけたいのに、そのタイミングがなかなか訪れない。

「…こいつら、思ってたよりめんどくさいぞ」
「そうだな…」
「絡まなきゃよかったかも」
「そうだな…」

微かな後悔を抱く2匹であった。













終わり。しかもこの後負けるっていうね。
スカタンクおやびん登場シーンもいつか書けたらいいのにな(願望)。

ありがどうございました!

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