ポケモン

□Pkmn
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時系列は、本編4話くらいの出来事です。










ある日のこと。リィエンとヒトカゲは、カナヤとジュプトルが人目を忍ぶ「ねぐら」を訪れ、いつものように過ごしていた。

「ヒトカゲ。毎日同じきのみで飽きないのか?」

オレンのみを頬張るヒトカゲにそう訊ねたのはカナヤだ。ヒトカゲはパチクリと一つ瞬きをすると、首を振る。

「本当か?そりゃ凄い」
「カゲッ!」
「昔からこればっかりだもんなー」

リィエンはカナヤに、ヒトカゲとの馴れ初めが自分ちのオレンの庭である事を話して聞かせた。
そうして、ふとある事を思い出す。

「そういえば…、何年か前におれたちで育てようとして、どっかにオレンのみを埋めたっけな」
「かげげかげ。」
「どこだったか忘れたけど、今頃どうなってんだろ……。歯車探しのついでに、そこも探してみるか」

そう提案するのを聞いて、木箱の上に腰を降ろしていたジュプトルが「フン」と鼻を鳴らした。時の歯車探索という重大な使命をさも軽いノリで考えていそうなリィエンの発言が、真面目な彼のお気に召さない様子だ。

「げー?カゲカゲッ!!」

意外な事に、これにはヒトカゲも激しく首を振って異を唱えた。ジュプトルに比べて真面目とは言えない性格のヒトカゲなら、てっきりオレンの魅力に食いつくばかりと思っていたのだが。

「なーんだ、いいのか?もしオレンの木が育ってりゃ、家から採ってくる手間が省けんだけどな」

庭いじりに心血注ぐ母親が目を光らせている中、こっそりオレンのみを掠め取る。今やそれは、リィエンの日課となっているのだ。今更その手間を疎む気はないが、無ければ無いで助かる。
しかしヒトカゲは厳しい顔で、「それはならん!」とでも言いたげに断固拒否している。

「こりゃぁ、お前さんちのオレンが相当スペシャルな味をしてるのかもな」
「そうだなぁ。かあさん丁寧に世話してるし」
「お前さんじゃないのか…」
「草むしりくらいは手伝うけど」

呆れるカナヤを尻目に、リィエンはヒトカゲに向き直る。きらきらした目で見上げてくる相棒の姿に、昔の約束を思い出した。まだ子どもの頃、ヒトカゲと別れたくなくて半ベソになりながら交わした約束だ。

そうだった。これを持って来るのは、おれの役目だもんな。

「そんなに美味いのなら、俺も一度食ってみたいぞ」

しみじみと笑い合っていると、出し抜けにカナヤが間抜けな台詞をぬかす。リィエンは思わずツッコミを入れた。

「いやこれ、ポケモンが食うきのみだから」
「なんでだ?きのみぐらい人間だって食うだろう」
「えっ?」
「え?」
「えっ?」
「え?」

カナヤがさも当然のように発した台詞で、リィエンはすっかり困惑した。人間同士が「え?」と繰り返すたびに、ヒトカゲとジュプトルは二人の顔へ交互に首を向ける。

「ひょっとして街の外って、きのみしか食いもん無いの?」
「ひょっとしてこの街じゃ、きのみは食わんのか?なに食って生きてるんだ?」

二人は同時に問答を交わし、部屋はすぐさま静寂に包まれるのだった。














終わり。この後、カナヤを憐れんだリィエンがポテトを買いに走ります。それを食ったカナヤはカルチャーショックをうけます。
ありがどうございました!

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