ポケモン

□Pkmn
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暗黒の未来にて。ジュプトル(キモリ)と二人のパートナー











「やーい、キモリやーい」

背後からのニンゲンの声に、キモリは振り返る。
先へ進みたい気持ちを抑えて、ニンゲンがのろくさくやって来るのを待った。やがて、疲れきった顔のカナヤが傍へやってくる。

「おじさん疲れちまったよ。休憩しようぜ、な?」

呑気なセリフが、はやる気持ちを煽り立てた。キモリはキッと目を吊り上げると、一気にそいつの肩まで登って怒りを表した。

「いででで!おい、引っ張るなって、ハゲちまう!」

「ぎぎぎー!」

「落ち着けってば。お前も疲れてるだろ」

つかれてない!急げ!キモリはそう言ってやったが、ニンゲンにはポケモンの言葉がわからない。この呑気者に言って聞かせられないのがもどかしかった。

案の定、意味をわかっていないカナヤは「よーしよし」などと言って、ひょいとキモリを抱えあげた。大きな掌がぽむぽむとキモリの頭を叩く。キモリは仕方なく、憮然とそれを受けていた。

だが、カナヤの手が周囲の仄暗い景色を遮断すると、とたんにいい知れない倦怠感が雪崩のように押し寄せてくるのだった。頭をうつ優しいリズムも相まって、瞼が重くなる。

「ほら見ろ、疲れてる」

小さな身体を抱えて、カナヤは辺りを見回した。
道なき暗い林だ。真っ黒な寂しい木立ちが、一人と一匹を見降ろしている。その内の一本の木へ歩み寄ると、根元へ腰を降ろした。

「この辺は、あまり寒くなさそうだ……。ちゃんと頑張るには、ちゃんと休まなきゃな」

そう語りかけたが、既にキモリは眠りに落ちていた。
カナヤはその寝顔を確認すると、ひとり闇の塊のような空を見上げた。

「…本当は、あんたがそれを教えてくれなきゃいけないんだ」

いつまで経っても明けようとしない空へ、カナヤは小さく呟く。





※  ※  ※






「おおおい。ジュプトルさんよ〜」

背後からのニンゲンの声に、ジュプトルは振り返る。
先へ進みたい気持ちを抑えて、ニンゲンがのろくさくやって来るのを待った。やがて、身を引きずるようにしてリィエンが傍へやってくる。

「疲れたぞ。もう動けんぞ……休もうぜ」

ブツブツいいながら、了承も得ずにその辺の草っぱらへ横になりはじめた。ジュプトルは目を吊り上げて、その身体にドスン!と座り込んだ。

「ぐわ、重っ…!内臓つぶれる!」

「グゥググ!」

「頼むって。少し休んだら、また動けるから」

ふーーっ、とため息を吐いて、しかしジュプトルは頷いた。「お前もちょっと寝ろよ」と声をかけてくる新しいパートナーから降りて、様子を見る。
気は急いているが、確かに休息が必要のようだ。以前のパートナーだったら、間違いなくそう言うだろう。

「たまには、いい夢見たいな」

くぐもった小声で呟いて、リィエンはジュプトルを手招きした。ほとんど眠りかけているように見えた。ジュプトルは大人しく隣に座る。

リィエンは大分この厳しい旅に慣れてきていた。あの瓦解した街から連れ出した時は、旅どころかまともなコミュニケーションすら取れなかった。こいつはもう二度と立ち直れないのではないか、と心配したものだ。それが今では軽口を叩き、どこそこ構わず横になって眠れるくらいだ。

「カナヤみたいに……頼りにならんくて…悪いな」

もごもごと寝言のように、リィエンは言った。ジュプトルは黙ってその顔を見降ろしている。

「がっかりしてる…かもしれないけど、置いてかないで、くれよ……後は任せた、なんて、おれは言わない。だから、お前も……」

新しいパートナーは事あるごとに、ジュプトルへそう繰り返していた。調査団に加わった、あの日から。
仲間の中には、「覚悟が足りない」という者たちもいる。ジュプトルも、はじめはそう思っていた。

「もうあんな……別れ方は、ごめんだ…。おれたちは…一緒にいるんだ。…最後まで」

ジュプトルは目を閉じると、彼の身体に背を預けた。













終わり。リィエンとジュプトルのお互いに対する気持ちの変化は、いつかきちんと書きたいなぁ…
ありがどうございました!

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