ポケモン

□Pkmn
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[ 2匹のゲンガー ]






ガス状ポケモン、ゴース。
そいつとは、マダツボミの塔で出会った。

柱の動きに合わせて踊ってるヒノアラシとヒノアラシに合わせて踊ってるおれを、暗がりから無言で見つめていた。参加したいのかと勘違いしたおれは、そいつを捕まえた。
しかし、そいつは踊りに興味があるわけじゃなかった。それどころか、戦うこと以外にはほぼ全部興味を持ってなかった。

そいつはいつも、戦う相手を探していた。とんがった目つきで強い相手を求めた。それから、めったに笑わない。

とても頼もしかった。おれの手もちは、そんなにバトルが好きなわけじゃなかったから。けど、喧嘩もしょっちゅうした。
ボールから出してみんなと遊ばせようとしても、決まって数分後には知らないポケモンにガンを飛ばしている。野生ならまだしもそれがトレーナーのポケモンだったりすると、あっという間に息抜きタイムがバトルタイムになってしまう。

正直おれもそんなにバトルが好きなわけじゃなかったので、疲れる時もあった。振り回され戦うはめになった回数は、数え切れない。

そんなやつだったけど、一緒に旅をしていく内に少しずつ変わっていった。
戦うことだけじゃなく、他の仲間たちを気にかけるようになった。バトルの中で「よくやった!」と声をかければ、めったに見せない笑みを向けてくれる事もあった。

自分以外のことにも、ちょっとずつだが興味を持ってくれているのだ。それは、おれが旅をはじめて本当に嬉しかったことの一つだ。



※ ※ ※




「そのゴースト、お前には勿体ないな」

ある日、ソウルの奴にそんな事を言われた。

「生意気ないい目つきだ。お前のような甘ちゃんに連れられてるなんて、同情するぜ」
「なんだとぅ?今すぐその派手な頭を、ばーさんみたいなムラサキ色に染めてやろうか!」
「フン」

おれの脅しにソウルは鼻で笑ったが、取り繕った顔とは裏腹にじりじりと後退していった。相当嫌みたいだ。

「今すぐ謝れば、パステルピンクで許してやるぞ」
「だまれ。本当の事を言ったまでだ。さっきのバトル…どうしてあのタイミングでゴーストを引いた。ヤツをかばったつもりなのか?」
「悪いか!負けたくせに、ダメだしする気か?」
「…オレは親切に教えてやってるんだ。自分が強いと思ってるんなら、大間違いだってな!」

ソウルは強い口調で言い放つ。

「余計な情をかけて、お前はヤツの勝機を捨てた。さっきだって、ごり押ししていれば相打ちにできたはずだ」
「おま、簡単に言うけどさ!痛い思いして戦ってるのは、こいつらなんだぞ。無茶させてまで勝つ必要ないだろ」
「それは、お前の考えだろう。下らない考えだ」

ぐぬぬ、とおれは怒りに任せて、傍にプカプカ浮いているゴーストを振り向いた。
「お前からも、何とか言ったれ!」

ところがゴーストは、じーっとソウルを見つめてから、無言で首を振った。

「あれ…ゴーストさん?」

いつもはクールなゴーストが、キラキラした眼差しでソウルを見つめていた。ショックだ。そんな顔、おれにしてくれたこと無かったのに…。
にしてもこれは、ゴーストはソウルの言いように賛成っていう事なのか?けど、そんなのってあるだろうか。

どんなポケモンだろうと、傷ついたり痛い思いをするのは嫌に決まっている。
力尽きてまでバトルで勝ちたい。そんな風に思うポケモンはいないだろう。勝負に拘らずポケモンをいたわるのがトレーナーの役目なのに。
だが、ソウルはこう言い切った。

「トレーナーのくせに、ポケモンを勝たせてやろうとも思わないのか」

何となくその言葉はガツンと来て、おれはいつもの憎まれ口も出せなかった。
ソウルはプイッとそっぽを向くと、早足にどっかへ消えた。

「別に、勝ちたくないとかじゃ…」
「オオオォ…!」

おれがもごもごと口ごもってると、ゴーストはそれに反応して低く唸った。
怒るような、訴えるような目つきでおれを見つめてる。

傷ついてもいいから、勝ちたかった。
こいつなら、そう言いそうだ。

「ゴースト…」

思えばこいつが喜ぶ時はいつだって、強い敵を倒した時。全力をかけたバトルに勝利したときだった。
おれはバトルの時、みんながなるべく倒れてしまわないように気をつけていた。だけど、ゴーストの「勝ち負け」に対する気持ちを、考えたことがあったろうか?








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