ポケモン
□Pkmn
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エピローグの続きをちょこっと。
ゲーム本編の主人公とパートナーの出合いシーンに当たります
いつもの時間。いつもの海岸で。
ポッチャマは知らないポケモンがばったり倒れているのを見つけた。
慌てて駆け寄り話を聞くと、ますますもって驚かされる。そいつはなんと、元は人間だったというのだ。ポッチャマの目には、ヒトカゲにしか見えないのに。
「そんな……そんなばかな……」
そのヒトカゲは途方にくれたように、繰り返し呟いた。ジロジロと自分の両手や元気よく燃える尻尾の先を凝視する。
ポッチャマもそんなヒトカゲの様子を観察する。どこか怪我をして、弱っている訳ではなさそうだ。それは良かったけれど…
「ねえキミ……本当にニンゲン、だったの?」
「本当だよ!決まってんだろ!」
「え〜……」
もしかしたら、頭を強く打ってしまったのだろうか?こんな突拍子もない事を、見ず知らずのポケモンに言うなんて。
ほとんど錯乱してるようなヒトカゲに、努めて落ち着かせるような口調で訊ねてみる。
「それなら、どうしてそんな格好なの?ニンゲンがポケモンになるなんて、ありえないと思うけど」
「知らんがな。こっちが聞きたいよ!」
「うぅ…じゃあさ、ニンゲンだった頃は何してたの?」
それは、といったきり、ヒトカゲは押し黙ってしまう。
ホラ、やっぱり。ただの勘違いなんじゃないか。
「お、おれ……どうしちまったんだろう…」
出し抜けにヒトカゲはそう呟いた。俯いて、己の両手を見下ろす。オレンジの腕についた砂を払いもしない。
「なんかしてた筈なんだ。人間、だった筈だけど……思い出せない」
「え?」
「今まで何してたとか、どこにいたとか全然分からないんだ」
しーん、と穏やかな黄昏の砂浜に静寂が降りる。呆然とした顔で俯くヒトカゲの姿に、頭をもたげていた警戒心が少しばかり引っ込んだ。
彼の言が本当なら、可哀想だと思った。自分のことが一つも分からないなんてさぞ心細いだろう。
もしかしたらそのせいで、「自分はニンゲンだった」などと思い込んでいるのかな?
「切羽詰まって何かをやってたような気がするんだ……けど、なんだろ……アレかな……片付けないかん数学の宿題やってたのかな……」
「スウガ??な、なにそれ…」
「成績下がりすぎて流石に焦ってたんだよねおれ……まぁ、学校サボッてたから当たり前なんだけどさ」
「わりと具体的に覚えてるじゃん自分のこと…」
「どこが具体的だよ。名前も思い出せないんだぞ…!」
「そこは忘れてるの!?」
「しょうがないだろ!思い出せないもんは思い出せないんだよっ」
なんだそりゃ…とポッチャマは怪しげなヒトカゲを見る。しばらく考え込んで、
「まぁ……いっか。ボク信じるよ!元はなんでも、今はただの変なヒトカゲだし」
「……ありがとよ」
もうどうでも良い。という雰囲気が二匹共に漂った。
それで、どうするんだろう。ポッチャマはそうたずねてみたが、ヒトカゲはやはり、行くあても帰る場所も思い出せないと答えた。
確かに、怪しい。
でも目の前のヒトカゲはひどく不安がっているようにも見えた。怪しいからといって、このまま知らんぷりしていいのだろうか。
トレジャータウンにもしかしたら、彼の事を知ってるポケモンがいるかもしれないよね…連れていってみようかな。
そんな風に考えるポッチャマの後ろに、二匹ポケモンが近づいてくる。
その意地悪な意図を知らないヒトカゲは、首を傾げて二匹を見守った。
終わり。このあと、ズバットとドガースにどつかれます。