ポケモン

□シュネとカゲボウズ
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むかしむかし あるところに いっぴきの カゲボウズが おりました


カゲボウズは うらみのきもちが だいすき

おこったり かなしんだり ばかりしている ひとの ねどこに かくれて

だいすきな うらみのきもちを たべて くらしていました


そんなことだから カゲボウズには ともだちが いなくて

いつも いっぴきで さみしいおもいを しているのでした


あるひ カゲボウズは ひとりの おとこのこに であいました

おとこのこには うらみのきもちが ありません


それでも さみしかった カゲボウズは おとこのこに いいました

「ぼくと ともだちに ならない ?」

おとこのこは こう こたえました




トントントンッ、という小刻みなノックに、男の口が止まる。
絵本を閉じると、男はノックのしたドアへと向かっていった。それを拾ってムクリと寝床から起き上がり、幼い少年はその後を追う。傍らに寝そべっていた一匹のデリバードも、それに倣った。

外套をまとった「お城の人」と男が、玄関口で立ち話をはじめる。少年はその光景にはすっかり慣れていた。この後、男が家を空けて行ってしまうであろうことも、わかっていた。なので小さく、残念なため息を吐いた。

しかし少年は、男のことを・・・自分に背をむけて行ってしまう男を、誇らしく思っていた。
傍にいてくれないのは寂しかったが、男が何のために行ってしまうのかを、知っていたから。

「お城の人」はすぐに帰っていった。男は振り返ると少年の名前を呼んで、手招きをする。

「ごめんな、行かなくちゃならない」
「うん。気をつけて」
「ああ。留守中頼んだぞ。メメ、お前もこいつを頼んだ」
「メリィー」

男は少年の髪の毛をくしゃくしゃにし、デリバードに声をかけると、外出の仕度にかかる。ものの数分もしないうちに、男は家を後にした。

「メリー!」
デリバードは高く鳴いて、少年を優しくつつく。少年はデリバードに笑いかける。

「寝ようか、メメ。それとも、続き読むか」
「メェリ?」
「カゲボウズがどうなったか、知ってる?」

少年はデリバードと手を繋いで、寝床へ戻りながら言った。



「本当はぼく、知ってるんだ」















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