ポケモン

□エピローグ
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 頭がぼんやりする。乾いたやわらかな地面は心地よいので、何もしないで寝そべっていた。そうして、どこからともなく声がしている事に気がついた。

「ねぇ・・・ねぇ!どうしたの?」

 どうした・・・どうしただって・・・?そういえば、自分はどうしたんだろう。

「キミ、だいじょうぶ?」

 何かをしていた気がする・・・何してたんだっけ?それに、ここが何処かもよくわからない。
 そう思ったとたん、口の中が苦い味でいっぱいになった。顔を微かにあげ、ぺっぺっとそれを吐き出した。たぶん砂だ。

「あ、よかった!気がついたんだね」

 声は案外近くでしている。それって、誰かいるって事じゃないか。そう気がついたので声の方を仰ぐと、不思議な光景がひろがっていた。

 空が、ひどく眩しい。
 そんな空に彩られて、遠くに広がる海も、自分がいる砂浜もキラキラと輝いている。口をあんぐり開けてそれに見とれていると、視界に透明な泡らしきものがやってきた。薄く虹色をおびたその泡球は、ほとんど動かずに宙を漂っている。気がつくと、浜辺中にそれと同じ泡が浮かんでいるのだった。瞬くように弾けては、空や海と一緒になってきらめいた。

なんて綺麗なんだろう。

「こんな所で、どうしたの?尻尾の火が消えちゃうよ」

 そんな景色の中で、その声の主はすぐ前に佇んでいた。
 どうしたの、と訊かれてもこっちが訊きたいくらいだった。こんな景色は見た事もない。初めて来る場所だ。それなのに、ここへ来る前に居た場所がどんなだったかも判らなかった。

変だ。何も思い出せない。

 目を凝らして、話しかけてくる声の主に焦点をあわせる。なんと相手はポケモンだった。いよいよ本格的に困惑してくる。あんまり景色が綺麗だから見とれていたけれど、事態はそれ所でなかったみたいだ。

 そのポケモンはどう見てもポッチャマなのだが、何かがおかしかった。明らかに、ちぐはぐだった。

「・・・・」

「?ねぇ、聞こえてる?」

 やっぱりおかしい・・・なんかコイツ、体がでかいぞ。自分と同じくらいのサイズじゃないか。それにもうまぎれも無く、こいつは言葉を話した。いや、さっきからずっと。

「・・・しゃべっとる・・・」

「え?」

「ポケモンがしゃべってる!なんでだ!?」

「うひゃぁ!?」

 いきなり飛び上がって叫んだので、謎のポッチャマは仰天して目を白黒させた。だがこちらも劣らず白黒だ。今まで何度も、ポケモンの言葉がわかればいいのに、と思った事はあるけれど。まさか現実になるとは。

「っていうか、現実か?夢かもな・・・なんか空がおかしいし・・・キラキラだし、暖かいし・・・ポッチャマだし・・・」

「ポッチャマだしって・・・キ、キミだってポケモンで、普通にしゃべってるでしょ」

 とそいつは呆れたような困ったような顔をした。図体のでかいお喋りポケモンに呆れられるとは心外だった。

「何言ってんだよ?この珍種め。おれのどこがポケモンだよ」

「そんなぁ!どっからどう見ても、ヒトカゲじゃないか」

 さっきから失礼しちゃうなぁ。とポッチャマは怒って言う。その全く予想外の言葉に、不意をつかれてしまう。

「え、ヒトカゲ・・・?」

 一体何を言ってるのだ。どうしてヒトカゲなんだ。馬鹿馬鹿しいと思いながらも、自分の身体に目を向けた。

 その瞬間、夢のように美しく輝く景色が、驚きのあまり吹き飛びそうになった。


















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