OBR

□最後の日常
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うつらうつらと舟をこぎ始めた時、異変に気がついた。
いや、一番に気づいたのは、例のトンガリグループだった。いつもの調子で、うっとおしい集団行動からばっくれようとしたのか。またはトイレにでも行くつもりだったのか。三人はぶらりと出入り口へ向かった。

「あれ。ちょっと、なに?」
みどりのいらついた声は、クラスの雑談や大声にとけこんで、誰も気にかける者はいなかった。本人たち以外は。
「何してんの」
「開かないんだけど。どーなってんのよっ」
「どっか引っ掻かてんじゃないの?さっさとしろよ」
呆れたように言って、直実はふすまに手をかける。ふすまはびくともしない。ち、と舌打ちして、その隣のふすまに手をかける。開かない。

その隣も、さらにその隣も、開かないのだった。

おや、と見守る中、直実の体がぐらりと傾いた。糸の切れた人形のように、いきなり重力に従って畳に倒れてしまった。
直実が倒れ伏した先には、すぐそばでふざけて笑っていたはずの亮の背中があった。亮の方も、うつぶせに横になっていたのだ。
準はつっぷしていた上身を起こそうとした。そうして初めて、驚いた。いつもの力の入れ方では、体は全然うごかないのだ。まるで肉じゃなくて、岩で体ができてるようだった。

おかしいな、と思った。固定された視界の中、身を起こしているクラスメイトは、一人もいなかった。みな自分のように机に伏せたり、横になってたりしている。互いに折り重なるようにして、誰もがぐったりとしてしまっていた。

どこかでクラスの誰かが何かを言ったような気がする。とても大きな声だ。悲鳴、ていうのかなあれは。でもそんな事はどうでもよくなった。どうしようもなく眠かった。
重い瞼を閉じると、そのままぷつりと意識は消えた。
















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