OBR

□中盤戦
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「じょうかーん。何て答えたんですか?」
「経過報告って言って逃げたよー」

そう言って父屋は、少々くたびれたような目を再び名簿のモニターへ向ける。

「一応、同点一位の二人は教えといたけれど…下手な事はまだ言えんよ」

殺害数三名、が現時点の最高得点だ。しかし、それを挙げた鎌城祐斗(男子7番)も江口修二(男子4番)も、こちらとしては完全にノーマークな生徒であった。それから考えても、この先の予測が当てになるかどうか。

「こいつら、もう三人殺ってましたよね。けどなんか、どっちも経歴的にぱっとしないヤツらねー」
「普段はこの二人……鎌城が双子の一人で、かなり活発で社交的。江口が家庭に少々問題あり。人格も生活態度も至って普通…だってさ」

流加が生徒の簡易調査表を眺めてそう答えた。亜新は「普通ねぇ…」と胡散臭そうに呟く。

「後は一人殺したっつー生徒がえーと、ちらほら?」
「三人。全員男子。死んだ生徒も入れると、全部で七人」
「え、女子は無し?あらあら、なにそれお淑やかクラスかよ」
「女の子も頑張れるってところ、見せてほしかったわね」
「ねーホント。佐藤って女子、武器の当たりが良いいくせに結構アッサリやられたし」

亜新がそう指摘する。母沢が残念そうに笑って言った。

「武器がいいから必ずしも勝てるとは限らないわ」
「それにだ。殺した数が一番多い生徒が生き残るとも限らないよ」

むしろ、度重なる戦闘で負傷し念願かなわず、となるケースの方が多かった。勿論、呆れるほど殺しぬいて優勝を飾った者もいたが。

「まだこれからだね…本当に、子どもって恐ろしい」

父屋は再び同じような事を呟いた。
これまで大方の予想で「やる気」になるとされていた生徒達が、未だ行動を起こしていない。
そして何の注目もされていなかった生徒が、同級生相手に殺人鬼と化していた。

予測のできない、不可解な子ども達。
それは彼らに限ったことではない。これまで受け持った何百人という中学生たち―この国で生きているすべての子どもがそうだ。教室という一つの箱に入れられ、同じ方針での教育を受けても、まるでその人生や思想が統一されることはない。

しかし、このクラスは死に絶える。たった一人を除いて。

「あら。大人だったら、ちゃんと子どもと向き合って導いてあげないと」

母沢がニコニコしながら、そっと呟き返した。

「子どもだってきっと……大人が恐いはずだもの」




























【残り 26人】












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