妄想の掃き溜め

□適当なshortstory−SS
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いつもより夜更かしをして、日付が変わるギリギリまで起きていた。
普段ならとっくに夢を見ている時間だと言うのに、睡魔が全く仕事をせずにいるお陰で瞼は羽の様に軽く、頭は普段より冴えきっていた。
やる事は特に無く、ただ清涼飲料水と不毛な電力を消費するだけで、この世に2つと無いくらい不毛で、けれど生産的な時間を送っていた。
しかし、そもそも「不毛」と言う日本語と「生産的」と言う日本語は対照的な物であるのだろうか。
この世において不毛で無いことなど無く、また生産的で無い事も無いのではないか。だとすればこれらの日本語は全く意味を成さず、存在する意義すら危ぶまれるのではないだろうか。
そんな事を考えている内に缶コーラを飲み干してしまったので、渋々パソコンの前から立ち上がり、冷蔵庫から冷えた新しい缶を取り出し、栓を開けながらまた座り込んだ。
ふとモニターの端の時計に目をやると、23:57を指していた。
もうすぐ「今日」が終わる。同時に「明日」がやってくる。
僕にとって「明日」とは何なのだろうか。ルーチンワークと化し、それこそ全く不毛で無駄な事に時間と労力を費やす事に何の意味があるのだろうか。
少し前に「明日がある」なんてフレーズが当時のサラリーマンの心を掴み、多くの人に影響と勇気を与えたが、今となってはそのフレーズが僕に与えてくれるものは何も無かった。
「今日」と言う非現実との別れ。「明日」と言う現実との衝突。日付変更の基準は、僕に残酷で無情な現実を突き付けた。
残酷な現実。真っ暗な部屋。僕の明日。液晶モニターの光。窓から差す月明かり。
「今日との別れ」
誰に宛てた訳でも無く、真っ暗で機械的な光だけが一箇所で明かりを放つ部屋で一人呟いてみた。
窓の向こうの光源に目をやると、白銀に輝く球体がそこにあった。
月明かり。
「乾杯」と手に持っていた缶を掲げ、白く輝くそれに重ねて一気に飲み干した。
時計が00:00を差した。曜日と日付もそれに伴って変わった。
「明日との出会い」と一人呟いてみた。
そんな風に思っても良いかも知れない。そう思えた。
月明かり。
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