short story

□アンケ1位SS蓮×忍
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何でこんな事になってしまったのか。


どしゃ降りの雨のなか、山道を蓮とひた走りながら、忍はそんな事を思った。
そもそも、日曜という休日に学園を出て街へ行ったのがいけなかったのか。しかし、中間テストが一週間後と迫った時期にマリモに襲来され、ジュースを参考書にぶちまけられた状況では、書店へ行かざるを得なかった。
そこで偶然外出していた蓮と遭遇したのが、二度目の不運だったのかもしれない。
街を徘徊していたどこぞの不良達に絡まれた蓮が、無視をすれば良いのに問答無用で殴ってしまったものだから、無理やり引っ張って逃走した忍である。
しかも相手が相当執拗に追ってくるものだから、お陰で忍は蓮を連れて夕刻まで街中を逃げ回り続ける羽目になったのだ。


気付いてみれば、学園へ戻る最終のバスが出た後だった。
途方に暮れるなか、空は茜色から夜の色に染まりつつある。2時間以上歩く事を覚悟して、仕方なしに忍達は歩いて学園まで戻る事にした。
だかそこで第三の不運が彼を襲う。
急に降りだした雨が、容赦なく2人を追い立て始めたのだ。
慌てて走り出したが山道には雨宿りをするような場所はなく、すぐに彼等はずぶ濡れになる。
視界を遮る程のどしゃ降りは、今日一日の運の無さの集大成だった。
それでも黙って、ただひたすら走り続けていた忍だったが、不意に蓮に腕を引かれて振り返る。
雨音が酷いので、無言の問い掛けを忍がすると、蓮も黙って指を指した。その先を辿っていけば、脇道を入って百メートル程進んだ辺りに煌々とネオンの灯りが点いている建物がある。
どうやら、そこで雨宿りをしようと蓮は言いたいらしい。
勿論忍は一も二もなく頷き、ネオンの建物を目指して駆け出すのだった。




そうして数分後ーーーーーーーーーーー。




「適当に選ぶからな」


館内へと立ち入った忍が呆然と周囲を眺め見ているなかで、蓮が馴れたように戸惑いもなくルームキーを手にする。
しかし、忍は声を掛けられた事すら気付かず、色々なタイプの部屋が写されたパネルを言葉もなく凝視していた。
「おい、相泉行くぞ」
強張った顔でジッとパネル写真を見ている忍の腕を、蓮が苛ついたように掴んでエレベーターまで引きずっていく。



「さみ…さっさとシャワー浴びて服を乾かそうぜ」
「・・・・・・・・・・・」



シャワー・・・・・・・?


そういえば、さっきの写真は全部ベッドルームばかり写っていたな。


ぼんやりとそんな事を考えている間に、目的の階に着いたらしく、再び蓮に腕を引かれて廊下を歩く。
鍵を開けた蓮に背中を押され、室内へ入った忍は部屋の中央にドンと構えた丸い大きなベッドを見て硬直した。




ーーーーーーーこれはもしかしなくても、俗に言うラブホか!?




如何にもセックスを目的とした生々しい部屋は、忍を混乱の渦に引き込んだ。





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