大海の金魚姫

□番外編02.
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「ろしなんてしゃんはせがたかいのね」



「そうか?」


「おぎゃ、ほーずきのかたぐりゅまよりたかいよ!」






地面が遠い!と足をバタバタさせるとロシナンテさんは暴れると落ちるぞー?と笑いながら言ったのでわたしはジタバタさせていた足をとめ、ロシナンテさんの頭にしがみついた。






「おとしちゃだめよ、ろしなんてしゃん」



「落とさねーよ、紅ちゃん」



「どじっこのいうことはしんようできないのでしゅ」



「手厳しいな紅ちゃん、紅ちゃんに怪我させたくないから絶対にドジはしない」



「…ほんと?きんぎょそうにちかえる?」



「なんで金魚草?」



「わたし、きんぎょそうだから」





今は人型ですけど金魚草なんですよ、わたし。という意味を込めておぎゃあとなけば紅ちゃんの口癖は変わってるな、と笑われる。…もしかしてロシナンテさん、金魚草がなんなのか知らない?違う世界の人だって言ってるし、…現世の金魚草と地獄の金魚草は違うみたいだし…と考えてわたしはロシナンテさんの頭をぺしぺし叩きながら枯れたのなら極楽満月にあるはずです!と極楽満月の方向を指差すとあ、そうだ火傷の薬…とロシナンテさんは思い出したようにそう言って歩き出した。






「こけちゃだめよ、ろしなんてしゃん」





今転けたらもれなくわたしも巻き添いになるから、そう言うとロシナンテさんは転けない転けない、と言いながらわたしの手に大きな手を被せて笑ってみせた。




ロシナンテさんの笑顔はなんだか安心する、きっと心の優しい人なんでしょう。わたしのまわりには優しい人ばかりで、しあわせだなぁとこの幸せを噛み締めているとロシナンテさんはやっぱり紅ちゃんは可愛いなぁ、とにこにこしながら呟いた。





「ろしなんてしゃんはこどもしゅきなの?」



「ん?まァ…好き、かな」



「わたし、ろしなんてしゃんしゅきよ」





会ったばかりだけれど、ロシナンテさんの雰囲気が好きでにこにこしながらそう言うとロシナンテさんもおれも紅ちゃんのこと、好きだよと返してくれた。うん、いい人だ。





「ろしなんてしゃんはやっぱりてんごくのひとなのね」



「地獄はやっぱり悪い人が多いのか?」



「おぎゃ、たくさん」



「そうか…おれも地獄に落ちるはずなんだけどな…なんで天国行きになったのやら…」



「ろしなんてしゃん、わるいことしたの?」



「……大切な人を裏切ったんだ…。嘘をついちまった…。おれの大恩人なのに……謝りてぇなァ」






センゴクさん、と恩人さんであろう人の名前を呟くロシナンテさんはとても辛そうな表情をしているであろう。…肩車してもらってるから表情は見えないけれど、声が落ち込んだ声だった。





「……きっと、」



「?」



「きっと、ゆるしてくれましゅよ、ろしなんてしゃん、いいひとだから。……もしそのひとがろしなんてしゃんをゆるさなくても、わたしがあなたをゆるしましゅ」






罪に合わせておもてなし、が地獄だもの。ロシナンテさん、地獄に落ちていないってことはきっと許して貰える罪なんですよ。そう思いながらロシナンテさんの髪をぐしゃぐしゃと撫でるとロシナンテさんは泣きそうな声でうん、と頷いた。





「おれは、助けられたんだ」



「おぎゃ」



「だから、自分が助けられたように…おれも誰かを救いたかったんだ」



「……だれかをすくおうとしてたの?」



「……助けたかったが…あいつがどうなったかはわからねェ」





自由になれただろうか、あいつは…と空を見上げるロシナンテさんに、わたしはきっとだいじょぶでしゅ、と言ってロシナンテさんの髪にそっと唇を押し当てた。



















(優しい貴方は、きっと赦される。)




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