大海の金魚姫
□05.
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……確か、大王さんの裁きのお時間にいましたね…公衆の面前で露出…所謂、一種の……
「へんたいしゃん?」
「変態!?」
え、違うんですか?と首を傾げるとお兄さんは誤解だ誤解!と周りの目を気にしながら慌ててわたしの口を塞ごうとするけれど、わたしはそれを華麗に避けてじゃあ…と口を開く。
「ろしゅつきょう?」
「露出狂でもないからな!?誤解だお嬢ちゃん!!」
「おぎゃ、そうなの?」
「そうだよ。…お嬢ちゃん、迷子か?」
「…とてもふほんいだけれど、まいご」
キョロキョロ辺りを見渡すけれど、キャプテンもベポさんもいないから…迷子になってしまったのでしょう。どうしようかな?と悩んでいると半裸のお兄さんはわたしを抱き上げてにっと笑ってみせた。
「探してやるよ!おれはエース。露出狂じゃないからな?」
「…じゃあ、ゆうかいはん?」
「誘拐犯!?いや、だから普通にお嬢ちゃんの家族を探すだけだって!」
「…なら、いいひと!ろしゅつきょうだけど!おぎゃ、わたしは紅でしゅ。かぞくはいま、いないけどはーとの……はーとのきゃぷてんのくるー?で…えっと……?」
「だから露出狂じゃないって!…いないのか?家族……そうか…というかハートのキャプテン…?…もしかしてお嬢ちゃんハートの海賊団のクルーなのか!?」
戦えんのか!?と驚くお兄さ…エースさんにいや、戦えないです。というか戦うって何と戦うんですか?という意味を込めておぎゃ?となくとその様子じゃあ戦闘は出来ねぇようだな、と苦笑いする。
「さて、探すか!心当たりはないのか?」
「きゃぷてん、ほんやしゃんにいくっていってた!」
「本屋か…よし、本屋に行く」
「その必要はない、火拳屋」
「……トラファルガー・ローか」
「紅、やっぱり迷子札は必要みたいだったな」
「…きゃぷてん、おこってる?」
「程々にな」
程々に、じゃない。怒ってる。キャプテンの後ろでベポさんがオロオロしていて、可哀想なのでエースさんにおろしてくだしゃい、と言って地面へ下ろしてもらい、キャプテンの足に抱きついた。
「紅、何か言うことはないのか?」
「はぐれてごめんなしゃい」
「ん、分かってるならいい。…ベポ、紙とペン買ってこい。あと紐な、迷子札を作る」
「アイアイキャプテン!すぐ買ってくるよ!」
「おぎゃ!?」
「…火拳屋、迷惑をかけたな。紅、少しは反省しろ」
「……おぎゃ…。あ、えーしゅしゃん、あーがとでした!」
「お、おう。もう迷子になるんじゃねーぞ?」
じゃあ、また会えたらいいな。そう言って笑ったエースさんにわたしも笑い返すとエースさんはじゃあな、とわたしたちに背を向けて去っていった。…露出狂だけどいい人だったな、と思っているとキャプテンがわたしの頭に手を置いておい、紅…と低いお声でわたしの名前を読んだ。
「迷子になってんじゃねーよ、心配するだろうが」
「ごめんなしゃい…」
「あっ、キャプテーン!紙とペン、買ってきたよ!あと、紐も!」
「おう、悪いなベポ。……これでよし。紅、これを首から下げてろ」
そう言ってキャプテンがわたしの首に下げたのは迷子札。見たことのない字が書かれていておぎゃ?と声を上げるとキャプテンはにやりと笑いながらわたしは迷子になりました、ハートの海賊団まで連れてってくださいって書いといたぞ、なんていうものだからわたしは小さくげせぬ、と呟いた。
「似合ってるぞ、紅」
「おぎゃ、うれしくない」
「だろうな」
「ベポしゃんたしゅけて、きゃぷてんがいぢめる!」
「へ?…紅、キャプテンは紅のことを心配して…」
「ベポ」
「…アイ、なんでもない。とりあえず船に戻ろう?ね?」
「おぎゃ、もどりゅ」
みなさん待ってますもんね、と心の中で呟いてベポさんの手を握るとキャプテンはそれでいい、と言って歩き始めた。
(いなくなった紅に気付いて、正直焦った。誘拐でもされたんじゃないかと思い急いで戻ると火拳屋に抱きかかえられているあいつを見つけ、少しもやもやした。こんな感情、おれは知らない。…が、まっすぐおれのところへ帰ってきた紅の姿にそのもやもやした気持ちは一瞬で吹き飛んだ。)
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