大海の金魚姫
□03.
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「はーとのかいじょくだん?」
「そうだ。おれはハートの海賊団船長、トラファルガー・ローだ。覚えたか?」
「……はーと、かいじょく、とら………ふぁ?」
「…キャプテンでいい」
「おぎゃ!きゃぷてん!」
覚えたよ!お名前難しくて覚えられないけどハートとキャプテンだけでも覚えてたら問題ない!たぶん!と思いながら万歳するとキャプテンは元気だな、そんな身体なのに…と苦笑いする。
「っつーわけだ。お前ら!こいつは紅、今日からハートの海賊団のクルーになる」
「どういうわけっすかキャプテン」
「訳ありだ。それ以上は聞くな。」
呆然とするお兄さん達にわたしもぽかーんとしてしまう。クルーってなに?ときくとベポさんが仲間って意味だよ!と教えてくれた……ん?仲間?
「でもきゃぷてん、わたし、かえらなきゃおこられる」
「帰らなくてもいい。お前はおれが治す、いいな?」
……どういうこと?帰らなくてもいいわけはない…けれど帰り方、わからない……んー…仕方ないか
「おせわになりましゅ」
「それでいい」
帰る方法もわからないわたしはとりあえず、お世話になることにした。ぺこりと頭を下げるとキャプテンは大きな手でわたしの頭をガシガシと撫でて満足気に笑ってみせた。
「きゃぷてん、きゃぷてん」
「ん?」
「よんでみただけ」
「そうか」
「ん。…おふねたんけんしていい?」
「好きにしろ。武器には触るんじゃねーぞ、危な…なんでもない」
「おぎゃ、ありがとでしゅ!」
「…気をつけてな。おい、ペンギン、こいつが怪我しねぇように付いててやれ」
「……了解っす」
ペンギン、と呼ばれたお兄さんは短く返事をするとわたしをじっとみる。なんでしょう?とわたしもみつめ返すと怖くねぇのか?と尋ねられた。
「おぎゃ、こわくない。はきゅたきゅしゃんにあったほーずきのほうがおかお、こわいよ?」
「ほーずき…?」
「わたしのかいぬし…ん?ほごしゃ…?」
金魚草だった時は飼い主であってるけどわたし、人型になったからなぁ…保護者って言った方がいいのかなー?と悩んでいるとおふねのくうきがかわったことに気付いた。…特にキャプテンの方からの不穏な気配を感じる…わたし何か変なこと言ったかな?と首を傾げるとキャプテンにおい、と話しかけられた。
「……奴隷か?」
「……どれい?」
なんですか?それ…と聞こうとするとペンギンさんが訳ありみたいっすね、と呟きながらわたしを抱き上げた。
「武器で怪我しないように見てますんで、大丈夫っすよ船長」
「…任せた。紅、ペンギンを困らせるな…とは言わねぇ。振り回してやれ」
ククッと笑うキャプテンにちょ、船長!?と声をあげるペンギンさん。…ちょっと面白いからわたしもおぎゃ!とお返事するとお嬢ちゃん!?とペンギンさんは困ったような声をあげた。
(地獄、か…それが常識になっちまってるなら、おれがこの世界を教えてやる。楽しいことがたくさんあるってこと、教えてやるよ。そう呟くと隣でベポがおれも紅に楽しいこといっぱい教えてあげるよキャプテン!と意気込んでいた。)
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