これがわたしの幸福論

□その4。
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今日の鬼灯様はとても眠そうです。




やっぱりオーストラリアに行くために先にやっておかなければいけないお仕事を寝る間も惜しんでたくさんしているからでしょうか…目を擦る鬼灯様にはらはらしながらわたしはいつも通り、お手伝いで書類の受け取りをしていました。



そんなわたしのはらはらが伝わったのか、大王さんが鬼灯様を見てあ、と言葉を零した。




「どうしたの鬼灯君」


「昨夜ちょっと徹夜で……」


「え〜、不眠は肌によくないよ、ハゲるよ?」


「お前がハゲろ。あ、これから桃源郷へ行ってきます。注文していた薬ができたようなので。」


「ハ…ハゲるもんか!…ああ、君は和漢薬の研究もしてるんだっけ?お疲れさん。薬ってことは白澤君に会うんでしょ?」


「………そうです。それから…あいつに頼むのは大変不服ですが…明日からオーストラリアに行きますからその間あいつに紅を預かって貰うので紅も桃源郷へ連れて行きます。」


「そっかー、じゃあ紅ちゃんも明日から居ないのか…寂しくなるねぇ…。あ、そういえば白澤君、君と似てるよね。顔つきもだけど小賢しい所がさ」


「それ、よく言われますが酷く屈辱です。」




…似てる…ですか?とおふたりの会話を聞きながらの首を傾けると鬼灯様から紅、と呼ばれたので書類を抱えたまま鬼灯様に駆け寄った。




「少し待っててください。せっかくなので桃太郎さんのお供の犬猿雉さんを誘いに行ってきます。」


「おぎゃあ?」


「そういえば紅はまだ会ってませんでしたっけ…とりあえず連れてきます。」


「はい!」




いい子で待ってます!と敬礼すると鬼灯様はわたしの頭を撫でてから何処かへ行ってしまった。


わたしは桃太郎さんのお供の犬さん、猿さん、雉さんってどんな方なんでしょう?と考えながら持っていた書類を鬼灯様の仕事部屋へと持っていき、机に置いた瞬間法廷の方からワンワンという鳴き声がしたので鬼灯様が戻ってこられたんだなぁ…と思い、駆け足で法廷へと戻った。





「あ、鬼灯様!あの子が紅さんですか?」


「そうです。紅、紹介します。この方達が………紅?」


「もも…たりょう…!!」




法廷に入ってすぐ視界に飛び込んできたのは大きな鳥を肩に乗せ、犬と猿を従えた鬼灯様の姿…。



その姿はまさしく、絵本で読んだ桃太郎そのものでわたしは感動のあまり腕をバタバタさせた…けれど…桃太郎って鬼退治を…鬼灯様、鬼が鬼退治するのですか?と首を傾げると鬼灯様は紅、とわたしの名前を呼ぶ。





「この方達が桃太郎さんのお供のシロさん、柿助さん、ルリオさんです。」


「おぎゃ!紅、でしゅ!」


「はい、よく出来ました。みなさん、この子が私の養子、紅です。仲良くしてあげてください。」


「はい!鬼灯様っ!よろしくお願いします!紅さんっ!」


「よろ…しくでしゅ、しろしゃん!」




ワンワンと言いながらわたしのまわりをぐるぐる走るシロさんにぺこりと礼をしたあと、ほかのお二方にも礼をした。





「では、 行きましょうか。……不服ですけど。」


「おぎゃ!ほーずき、めっ!」


「……紅と離れ離れなんて寂しいじゃないですか。しかもあいつに任せるなんて…」


「ほーずきっ!」




お顔が怖いです!と指摘すると小声で不満を漏らした鬼灯様の傍に駆け寄って、鬼灯様の足にぎゅっと抱きつこうとした寸前でわたしは鬼灯様に抱っこされていた。




「紅は、私の家族です。」


「ほーずき?」


「……すみません、なんでもありません。」


「おぎゃあ?」


「では、行きましょうか。」





ぎゅっとわたしを抱きしめながら歩き出す鬼灯様に、シロさんと柿助さんはてこてことついてくる。




本物の桃太郎さんに会えるのがとても楽しみです!なんて思いながら鬼灯様にぎゅっと抱きつき返すと鬼灯様の眉間の皺が少しだけマシになった気がした。




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