これがわたしの幸福論

□その2。
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あの世には、天国と地獄があります。




地獄は八大地獄と八寒地獄の二つに分かれていて、更に二百七十二の細かい部署に分かれています。




わたしが鬼灯様に二百七十二とはどれくらいの数なのですか?と質問すると、鬼灯様はたくさんの金平糖を大きなお皿の上にひとつひとつ丁寧に並べてこれくらいです、と二百七十二個の金平糖を見せてくれました。

びっくりです。こんなにたくさんの金平糖を見たのは初めてです!!と腕をブンブン振ってこの感動を鬼灯様に伝えると鬼灯様は並べられていた金平糖を金魚草柄の巾着袋にいれて、わたしに渡してくださいました。



「食べ過ぎちゃダメですよ?金平糖は一日に?」


「ななちゅぶまで!!」


「はい、よく出来ました。」



紅はいい子です。とわたしの頭を撫でてくださる鬼灯様にもっと撫でてください!と鬼灯様の大きな掌に頭をぐりぐりと押し付けるわたしの行動はすでに日常風景として、獄卒のみなさんからはあたたかい視線を向けられています。



と、話がずれてしまいました。



戦後の人口爆発や悪霊の凶暴化、


あの世は前代未聞の混乱を極めていました。




現世でもあの世でも、統括に欲しいのは冷静な後始末係です…が、そのような陰の傑物はただのカリスマなんかよりずーっと少ないのだと、わたしは教えていただきました。






…そんな冷静な後始末係さんことわたしの保護者様、鬼灯様は只今お仕事で別の場所へ行っています。



「閻魔大王ッ!!阿鼻地獄で川が氾濫していますっ」


「天国から要請書が…」


「黒縄地獄は財政破綻しそうですっ」





今日もみなさんお元気です。

ガヤガヤ、ドタバタする獄卒のみなさんとオロオロする大王さんを眺めながらわたしは鬼灯様への書類を受け取って鬼灯様の仕事部屋へ運ぶ作業に追われていました。



法廷と鬼灯様の仕事部屋を行ったり来たり…ちょっと疲れてきました。と法廷の隅でぺたんと座り込んでいるとそれに気付いた獄卒のお姉さんが心配そうに駆け寄ってきてくださった。




「紅さん、大丈夫ですか?今日は忙しいですものね…あ、気晴らしにお香先輩のところへ行きますか?」


「おぎゃ!あーがとでしゅ!」




いえ、わたしはまだまだお手伝いできます!と首を横に振ってからお気遣いありがとうございます!とぴしっと敬礼してみせると獄卒のお姉さんはあんまり無理はしちゃだめですよ?とわたしの頭を撫でてからお仕事に戻っていった。



……わたしに足りないものは知識だけじゃなくて体力もですね。




なんて考えていると紅さーん!とわたしを呼ぶ声が聞こえてきたのでわたしははいっ!とお返事しながらわたしを呼んだ獄卒さんのところへ駆け寄った。



「鬼灯様への書類です。いつもお疲れ様です。」


「あーがとでしゅ!おぎゃ!」



獄卒さんこそお疲れ様です!と笑顔で書類を受け取ってまた鬼灯様の仕事部屋へ向かおうとした時、今度は大王さんに呼ばれた。




「紅ちゃん!鬼灯君が何処に視察に行ってるか聞いてる?」


「おぎゃう?」




鬼灯様の視察の場所…ですか?



大王さんと小さい獄卒さん…確か、唐瓜さん?は困ったようなお顔をしている…。鬼灯様へ緊急の用事でしょうか?



鬼灯様の養子になってから2週間が経ちました。わたしは必死に人の言葉を勉強して、ひらがなと数字くらいならなんとか…辛うじてですが読めるようになりました。あと、話せる言葉も少しだけ増えました。わたしは勉強などの飲み込みが早いみたいで、鬼灯様はびっくりしてました。




あ、またお話が脱線しましたね。

…鬼灯様は毎日お仕事で大変です…今日は構って攻撃は出来ませんね、と内心ため息を吐きながら大王さんと唐瓜さんに近付いた。



「ほーずき、はりやま?」


「あ、そうそう!針山辺りを視察するんだったね!ごめんね紅ちゃん、ワシ、うっかり忘れちゃって…」


「おぎゃ!」



大王さんもお忙しい方ですから、仕方ないですよ!と笑ってから唐瓜さんにもぺこりと頭を下げて、わたしは書類を運ぶべくくるりとお二人に背を向けて鬼灯様の仕事部屋へと歩き出す。



それにしても書類、たくさんありますね…。



わたしがもっとお手伝いできればいいのですが…そのためにもお勉強を頑張りましょうそうしましょう。



鬼灯様、わたし、頑張りますね!



なんて、視察先でお仕事を頑張っているであろう鬼灯様に届くように大きな声でおぎゃあとないた。























(視察から戻られた鬼灯様が紅、不喜処の従業員不足が解消されましたよ、と何処か嬉しそうに仰っていたのでよかったですね!鬼灯様!という意味を込めてわたしは鬼灯様に笑いかけた。)

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