これがわたしの幸福論

□その1。
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「と、いうことで紅は正式に私の養子として育てることにしました。」


「そっかそっか…よかったねぇ紅ちゃん…っ!!」




うるうると涙ぐんでいる大王さんは鬼灯様に抱っこされているわたしを見てほっとしたように笑ってくださった。



こんにちは!元ぴっちぴちの金魚草の紅と申します!



元々はただの金魚草でしたがある出来事をきっかけに人の姿になったという…自分でいうのもあれですが…ちょっと特殊な金魚草なんです。



人の姿になり、色々なことがあってわたしは金魚草に戻ることよりも人の姿のまま、鬼灯様のお傍にいさせていただくことを決めたのが昨夜の出来事です。



色々なこと、というところは割愛させていただきますね?



そんなわけで、わたしがそういう選択をしたことから鬼灯様はわたしを正式に養子として育ててくださることになったのですが…昨夜はとても大変でした。



わたしが人として生きる決断をしたら白澤さんがわたしのことを養子にしたいと申されまして……そこからはお察しの通りでございます。



子供の姿のわたしは起きていることだけでも精一杯の時間なわけです。

今までもやもやしていたことが吹っ切れて安心して猛烈な眠気に襲われたんです…。



なのに、鬼灯様と白澤さんが、口喧嘩をはじめてしまいました…。



お二人の勢いに圧倒され、尚且つ眠気に襲われているわたしはなんとか眠いのを堪えてお二人をお止めしようと必死におぎゃあおぎゃあと訴えたのですが、段々事態は悪化していき…鬼灯様が白澤さんを殴ろうとしたところでわたしはこの状況に堪えきれなくなってしまって…泣き出してしまいました。



結果、わたしに気付いたお二人はぴたりと止まり、わたしを泣き止ませようとわたしに触れようとしてくださった瞬間、一連の流れをずっと見守ってくれていたわたしの家族である金魚草たちがうちの大切な家族に何をしてくれとんじゃー!!と一斉になきはじめてしまいまして…その大きな声に起こされてしまった獄卒のみなさんが何事だ!?と出てきてしまったり…なんだか大変な騒ぎになってしまったんです。



大王さんにもご迷惑をお掛けしてしまいまして大変申し訳ありませんでした、とぺこりと頭を下げるわたしに大王さんはよかったよかった、と優しいお言葉をかけてくださいました。



そうそう、白澤さんがわたしを養子に…と言ってくださったのはどうやらわたしの身体の治療をするためだったようです。


わたしは人の姿をしておりますが実はとても不完全らしくて…わたしが安全に生きていけるように、そういう申し出をしてくださったようなのです。



わたしが泣いたことで冷静さを取り戻したお二人がきちんと話し合いをしてくださった結果、定期的に白澤さんからの診察と治療を受けるために桃源郷へ通うことを条件に、わたしは鬼灯様の養子になることになったのです。



そして今、鬼灯様はわたしのことを大王さんに報告してくださっていたのですが…大王さんが泣いてしまわれてお仕事を始められない状態になってしまっています。


わたしを抱っこしている鬼灯様からは不穏な空気が流れ出ております。




「……大王、そろそろ仕事を…」


「うん、分かってるってば!あ、そうだ!紅ちゃんの事なんだけどこれからも仕事場に連れてくるんでしょ?」


「はい、そのつもりですが…やはり…いけませんか?」


「いいよいいよ!紅ちゃんには鬼灯君が必要だもんねぇ?…ってそうじゃなくてさ、ひとつ提案があるんだけど…聞いてくれるかな?」


「提案…ですか?」


「そう!紅ちゃんを正式に鬼灯君のお手伝いさんとして雇っちゃおうと思って!」


「…………は?」




紅を…従業員に?と目を見開く鬼灯様に泣き止んだ大王さんはにこにこしながらうん、と頷いてみせる。




「だって紅ちゃん、書類の受け取りとか簡単なお手伝いを今までもずっとしてくれてたでしょ?なのに給料も出さないなんて…ちょっとねぇ…」


「……いえ、でも紅はまだ子供ですし…」


「子供だけど、紅ちゃんがしてくれてるお手伝いは歴としたお仕事だよ?あ、お給料のことについてもちゃんと考えてるから大丈夫だよ?」


「…今の私の収入なら紅を養うことに何の問題もありません。…それにさっきも言いましたが紅はまだ子供で、つい最近までは金魚草だったんですよ?お金の使い方もよく分かっていないようですし…普通に給料を出すことには抵抗があります……子供に大きな額のお金を渡すはどうかと思います…。」


「うん、きみがそう言う思ったから…お小遣いみたいな感じにしようと思ってるんだ。」


「お小遣い…ですか?」


「そう!現世でいうスタンプカードっていうのを作って紅ちゃんが一回お手伝いする毎に判子を一個押すんだよ。判子が25個貯まったら500円と交換する。その時に新しいスタンプカードも一緒に渡して…それの繰り返しっていうのはどうかな?」


「なるほど…。」


「判子は…鬼灯君とワシと…お香ちゃん辺りにでも持っていて貰おうかな?とにかく、紅ちゃんがお手伝いする人に判子を持ってて貰おう。ね?いい案でしょ?」


「はい、大王にしてはなかなか…そうですね、それならいいです。」




…ん?何のお話なんですか?と首を傾けていると鬼灯様はわたしの頭を撫でてから紅、とわたしの名前を呼ぶ。




「紅は今日から私の養子兼、私の部下…従業員さんです。従業員といっても今まで通りのお手伝いをしてくれたらそれでいいですからね?もちろん、今まで通りお手伝いの時以外は自由に遊んでください。」


「はいっ!」



とにかく、いつも通りでいいのですね!大半のお話はよく分かりませんでしたが多分大丈夫です!と元気よくお返事すると鬼灯様と大王さんは頬を緩めながらこれからもよろしくお願いします、と言ってくださったのでわたしの方こそ、よろしくお願いします、と心の中で呟きながらぺこりと頭を下げた。



















(こうしてわたしは、鬼灯様の養子兼お手伝いさんになりました!)

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