きっと、それは。

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阿伏兎と名乗った彼は、気だるそうに笑った。
俺に着いてこいよ、と。



宇宙海賊春雨に誘拐されたのは、1か月前のこと。
仕事帰りに拉致され、牢屋に入れられた。
そこには、私の他に数人の女性がいた。
これからお前たちは吉原に売られるんだ、と私を連れてきた男は嫌な笑い方をした。
それをきっかけに女たちは泣き叫ぶ。
恋人がいるのよ!家族がいるのよ!と。

そして私は立ち上がった。
ここから逃げるために。彼女らを逃がすために。
何故か拘束はされていなかったから体は自由だった。
地球人だとたかをくくっていたのだろう。

右足で思いっきり錠の掛かっている扉を蹴り飛ばす。
がきーんと大きな音を立て、扉は倒れた。

「 てめぇ、何者だ!」

男か驚いているうちに左足で回し蹴りをくらわす。
油断していたのか、壁に打ち付けられそのまま失神した。

「早く逃げよう!」

唖然としている彼女らに声をかけると皆、弾かれたように蹴破った扉から出ていった。

捕まっている場所がどこか分からないけど、とりあえず逃げれば出口があるはず。
私たちは必死に走った。

「ねえ、君たちここで何してんの?」

穏やかな声がする。
そこには、オレンジの髪の笑顔を浮かべた少年が立っていた。
じろりと私たちを値踏みするように見た。

「新人、って訳でもなさそうだしね。もしかして逃げてきたの?」

「女を殺すのは趣味じゃないんだヨ。もしかしたら強い子供を生むかもしれないだろ?」
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