頂き物

□時雨様からの4321hit記念
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【憂鬱の成れの果て】


 憂鬱だった。いやむしろ憂鬱である。
 俺が進むのは東方司令部の廊下だ。行き交う人間が、犬とも猫とも異なる俺の姿を見て驚愕したり避けたり悲鳴を上げたりする。
 まぁ、俺はカルトやライやサナと違って、人前にはあまり出ないからな。

『…………憂鬱だ』

 あぁ、憂鬱だ憂鬱だ憂鬱だ。
 俺の気分が重い理由は、人目に晒されているというのもあるが、もう一つ。

 ブリッグズの事件を覚えているだろうか?
 あの気の強い女と、奇妙な髪型をした男が多い、吹雪の荒れ狂う北方である。
 今回、またあそこから依頼があったのだ。

 新たなポケモンが、現れた。
 早速向かわねばならないのだが、どうしてかこの時期は、エリオも他のポケモンも忙しかった。ポケモンの依頼が殺到したのだ。
 その時余っていたのはライと俺。ライは幼いので無理。という簡単かつ妙に納得がいかない消去法で、俺が行く羽目になった。

 ……でも、なぁ。

 カイが「コイキングとヒンバスが暴れているのを止める」で、エネが「いきなり町に表れて混乱しているコマタナを止める」で、俺が「吹雪を操り暴れ回り、甚大な被害を出しているポケモンを退治する」なんだ?
 せめて「止める」じゃないのか? 「退治」なのか?
 しかも俺だけ相手のポケモンが不明だぞ? あいつらの要領が良いのか? 俺が悪いだけなのか?

 しかも寒いのは苦手なんだよな……。

 憂鬱、だ。ゆっくりゆっくりと足が重く動く。けど歩む限り、目的地にたどり着く。
 俺は深いため息をつき鼻先でドアを、何故俺は涙目になりながら転げてるんだ?

 鼻、から伝わる衝撃。目の前で星が舞い、嘲るように踊る。感覚が、輪郭が曖昧に歪んだ。
 混乱、困惑。惑乱という言葉もあったなぁとか冷静な自分が顔を覗かせるので無視する。

 まだ細部の読み込みに戸惑っている世界がピントを合わせたのは、ドアを開けた張本人だった。

「あ、来てましたよ! ……あ? わりぃ、ぶつけたか?」

 ブレダだ。腹がカビゴンみたいな男である。
 ……つまりこいつが、こいつのせいで。俺は顔面強打する羽目になった訳で。

「ん?」
『なーに全く警戒せずに軽々しくドア開けてんだメタボがぁあああ!!』
「なぁに愛しく素敵なソルにタックルやってんだメタボがぁあああ!!」

 俺の「つじぎり」とエリオの踵落としをまともに食らったブレダは、言葉もなく倒れた。



〜おまけ〜

 渋々向かったソルを待ち受けていたのは、

『……あ、やっと救助来た! 助けて! アブソル君、僕を助けて! この人たち僕を食べようとしてるぅう!!』
『おいお前らそいつは食いモンじゃねぇ! ただのジュゴンだ!!』

 人魚の疑いをかけられ食われそうになっていたジュゴンが怯えているだけの情景だった。

(その後、ジュゴンさんは泣きながら帰って行きました)
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