頂き物

□時雨様からの頂き物
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ラキさんに教わった通り、お菓子を作って みた。 カルトさんの好きな辛い実を取り込んで作 ったクッキー。おいしいだろうか。味見はで きなかった。辛すぎて味が分からないのだ。 ……食べた時の反応を想像する。 ………………。 ……顔に熱が集まってきているのが分かる 。あぁ、早く渡したい。

という訳でカルトさんを探す。綺麗に包ん だクッキーを両手に抱き、目を閉じて心を澄 ます。 サーナイトの種族は、心が読める。それを 応用して居場所も分かるのだ……っと、発見 。 ベランダで一緒に居るのはクリフさんだ。 珍しい取り合わせ。何を話しているのだろう 。

自然に早足になる。偶然にも誰ともすれ違 わなくて(ライに出会ったら『ちょーだい』 と言われそうだ)、数分で二匹の元に着いた 。

『あ、サナ』 『おろ……。……んじゃカルト君、オッサン ちょぉおっと用事思い出したから! じゃあ ねー』 『はい? あ、はぁ、どうも』

クリフさんはそう言い残し、ぺったぺった と歩いて私の横を通りすぎ、ニヤッと笑いか けてきた。 ……な、何だ? その『後は若い子同士で ごゆっくり〜』みたいな視線は!

『……あ、の。カルトさん』

声がかすれる、緊張している。体が強張る 。心臓の鼓動が激しくなって、うるさい。

『何だ? つーかそれ何?』 『あ、あの、プレゼントです』 『え?』

カルトさんの訝しそうな困ったような表情 、が眩しすぎて俯いた。風邪引いたように全 身が火照る。

『……俺、今日誕生日じゃないんだが』 『いやあノッ、』声が裏返ったぁあ『つ、作 ったので』

どうぞ、と震える手で差し出した。 受け取られなかったらどうしよう、そんな 不安を眉間に集めて顔が歪む。

数秒経過した。そっと、袋が離れる。そし て触れた、温かい手。

それがカルトさんのものだと気づき、熱暴 走を起こしそうになる。

『ありがとな』

嬉しそうに、言われて。

そこが限界だと思った。

『は、い』

これ以上一緒に居たら、死んでしまいそう 。

なのに、意思に反して足は動かずに。

カルトさんは、こんっと金属を叩いた。

『隣、来ないか?』

はいいいい、い? 意識が分断された。喉の奥でヒュルヒュル と空気を空回りさせて、絶句。 あの、頭が爆発するくらい恥ずかしいのに 。

これ以上、限界を越えるんですか。
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