贈り物

□気になるあの人
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ガタタン…ゴトン…

「あ〜暇だ…」

「兄さんたら…
まだ乗ってから十分もたってないでしょ」

「暇なものは暇だぁぁ」

「全く…」

エドワードとアルフォンスの声が人気のない列車に響く
二人は今、「血のように赤い石」の噂を国軍大佐のロイから仕入れ(奪い)、地図にも載っていないような小さな坑山に向かっている

「…まだ痛いの?」

アルフォンスが背中を擦っている兄に問う

「う〜んまだ少し、な
にしても凄かったよな〜」

「確かに
でもあれでも本気じゃなかったんでしょ?」

「だろうな」

兄弟の会話は自然と先日の国家錬金術師同士の戦いのことになった

「僕たちもかなり強い自信あるのにね」

「やっぱりさすが軍人って感じだな」

「こないだまで軍人には見えないって言ってたのに…」

「まさかあんなに強いとは思わないだろ!!」

「はいはい…
でも兄さんをあんなにあっさり倒すなんて、もしかしたら師匠と同じくらい強いのかな…」

「さすがにそれはないだろ…」

「あんなに強くて階級も高いのに自慢したりしないところも凄いよね」

「てゆーかおもいっきりフレンドリーだよな…
会っていきなり敬語使うなって言う将軍がいるとは思わなかったぞ」

「それにかなり可愛いしねー」

「こないだ中尉なんて『¨私の¨クリアちゃん』とかいってたぞ」

「…男女ともにモテるんだね…
そう言えばこないだ兄さんが寝た後に散歩してたら私服のクリア見たよ」

「まじか!!クリアの私服ってどんな感じなんだ?」

「うーん…黒いシャツに黒いズボンだったよ
服装は男の子っぽかったな…
スカートとかはいてたらもっといいのに…
あと首に包帯巻いてたかな」

「首に包帯!?怪我でもしてたのか?」

「いや、いつも巻いてるみたい
なんでもかなり昔に首に傷痕が残ったらしくて隠してるんだって
だからいつも軍服の下にタートルネック着てるらしいよ」

「隠すほどの傷なのか…」

「うん、『他人が見て気持ちのいいものでもないし、何よりこんなもの見せたくないからね』って言ってた」

「クリアは優しいんだな…」

「だよね
…兄さんも見習えば?」

「んだと!?
じゅーぶん優しいじゃねえか!!」

「そーいうところ
全く…すぐに怒るんだから…」

「う…」

「そう言えばクリアって怒ったりするのかな…」

「さぁ…
でも怒ったら怖そうだよな」

「だよね…
兄さんくらいならかるーく捻り潰されちゃうんじゃないかな」

「捻り潰されてたまるか!!
俺はいつかクリアに勝つんだ!!」

「ふむ、それは困ってしまうな」

威勢よく立ち上がったエドワードの後ろからのんびりとした声が聞こえ、思わず二人が振り返る

そのまま状況が理解できずにフリーズする
二人の視線の先には…

「だ、大総統…?」

先にフリーズが解けたアルフォンスが声を発する
エドワードはまだ固まっている
これほど人気のない列車に国のトップが、それもアロハシャツ姿で乗っているとは誰が予想出来ただろうか

「なんでこんなところに…」

「鋼の錬金術師君がいると聞いてな」

「はぁ…そうですか」

「それにしても、ブロッサム少将は我らのエースだからな
そんなに簡単に倒されては困ってしまうよ
はっはっは」

そう言って高笑いする大総統を見ながら、兄弟は困ったように頭をかく

「大総統ー!!
どこですかー!!」

「大総統はいずこー!!」

「む、うるさい部下が来てしまったな…
それでは鋼の錬金術師君と弟君、さらばだ」

「って大総統!!窓から出ないでください!!危ないですよ!!」

「はっはっは
まだ若い者には負けんよ」

そういい放ち、国のトップが車窓から出ていく
ちょうど途中下車の駅が近づきスピードが落ちていたとはいえ、通常の人間なら自殺行為だ

「…行っちゃった…」

「すごいな…
本当に人間なのか?あの人」

「微妙なところだね
でもクリアってあんな人に『我らのエース』とか言われるほど凄いんだね…」

「だな…」

「勝てるの?兄さん」

「…格の違いを見せつけられそうだな…」

ひきつった笑いを浮かべる兄にアルフォンスは肩をすくめてみせる

「…兄さん
これから旅していたらいろんなことがあるかもしれないけど、二人で頑張っていこうね」

「…もちろんだよ」

「何かあっても一人で抱え込まないでよね」

「おう」

「…牛乳飲んでね」

「んなっ…!!
それとこれとは関係ないだろ!!」

「いつまでたってもその身長だったら困るのは兄さんでしょ?」

「だーれが何年たっても身長が伸びない豆粒ミジンコドチビかーーーーー!!」

「そこまで言ってないでしょ!!
そうやってすぐ怒るなんて完全にカルシウム不足じゃないか!!」

「まだ言うかー!!」

笑いを含んだ声で言うアルフォンスを鬼の形相で追いかけるエドワード

列車が坑山に着き、めちゃくちゃになった車内の様子を見た車掌に二人が怒られるのはまだ先のことだった…
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